封内風土記旧葛西大崎領内編

封内風土記旧葛西大崎領内編　
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封内風土記巻之十八上　　　　　　　　　郡邑編
(栗原郡)
栗原郡、東接二登米郡一、西隣二羽州一、界二大柴山・禿嶽・軍澤山・鉄砲（銕炮）平山・菅根嶽・柴倉山・高岩原・田代長根・駒嶽一、南連二玉造・志田・遠田三郡一、北跨二磐井郡一、東西百九里餘、南北六十三里餘、田上ノ中、一萬八百五十四町八反二畝餘、其畠上ノ中、五千七百九十二町三段四畝餘、其貢中ノ上、其邑九十六、（分レ之為二五区一、其一曰二一ノ迫一二十九邑、乃古姫松荘也、其二曰二二ノ迫一、十四邑、乃古尾松荘也、其三曰二三ノ迫一、二十八邑、乃古高松荘也、其四曰二佐沼荘一、四邑、其五曰二栗原荘一、十七邑）其戸九千九百十八、其口六萬五千六百二十一、其三萬五千二百九十三男、其三萬三百二十八女、馬八千四百六十三、鬼首邑歩卒十一口、男女五十四、馬六、公族白河上野村祐しらかわこうずけむらすけ、家僕居二其邑一者、男女凡（下皆同）二百六十七口、馬九、同黒木正三郎胤信くろきしょうざぶろうたねのぶ家僕、百二十八口、馬四、同石母田筑前興右いしもたちくぜんこうすけ家僕、千三十口、馬四十、同中村源三郎義景なかむらげんざぶろうよしかげ家僕、千十七口、馬十、同亘理伯耆倫篤わたりほうきともあつ附属給主士、十六口、上下男女凡二百三口、馬三、家僕二千二十七口、同葦名刑部盛倫あしなぎょうぶもりとも家僕、百九口、同上遠野伊豆廣秀かみとおのいずひろひで家僕、六十四口、馬三、同大立目掃部盛篤おおたちめかもんもりあつ家僕、二百十二口、馬十二、同石母田典膳多頼いしもたてんぜんたより家僕、百三十口、馬八、遠藤内匠善信えんどうないたくみよしのぶ家僕、七百三十八口、馬七十、長沼五郎助致辰ながぬまごろうすむねたつ家僕、三百四十四口、馬三十六、高屋喜庵英顯たかやきあんひであき家僕、八十三口、西大條四郎賀直にしおおえだしろうのりなお家僕、九十二口、早川齋惟義家はやかわさいびよしいえ家僕、百八十九馬一、総計六千四百八十三口、馬百九十一、（邑民之外也）。
神社凡三百七十一、仏宇凡八十二、石仏凡二、寺凡百九、倉廩凡十二處、孝子凡十一人、悌子一人、老壽一人、温泉凡三、古塁凡九十四、山一、川凡十四、泉凡十三、沼凡十五、堤凡三、旧跡凡三十四、瀑布凡十一、名所一、老槻一、名木凡二、旧社跡凡四、古寺跡凡四、壇凡二十九、古塚凡二、古墳凡二、節女墳一、鉛山一、石一、池一、坂一、井一、道凡三十七、橋凡百十六。
一ノ迫上郷姫松荘鬼首邑、
戸口　凡　二百四、歩卒十一口、男女　凡五十四、馬六、以下至二嶺﨑邑一、凡　二十九邑、呼レ之曰二一迫一、至二狐﨑邑一、凡　十二邑、呼レ之曰二上郷一。
神社　一、三十六社宮、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　一、不動堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、鬼亡山洞雲寺、曹洞宗、本郡花山邑、城国寺末寺、伝云、城国寺第三世、玄達和尚開山。
倉廩　一、儲蓄ちょちく雑穀。
温泉　凡　三、
其一、號二荒湯一、又称二姥湯一、治二中風ちゅうぶ・症瘡・漯癧及諸痛一、名跡志曰、温泉上有二大石一、自レ古土俗称二之荒黄河神社大物忌命おおものいのみこと一、尊二崇之一尚矣、河流曰二荒黄河一、其下流為二玉造河一、神名帳、玉造郡有二荒雄河神社一、即此地也、往昔以二栗原郡・玉造地相近一、而誤置二之於玉造郡一歟、土俗誤二荒雄一称二荒黄一也、然則称二湯於荒湯神社一、亦称二荒雄一可也、識者辨レ之、相伝古昔瘞うずめる二山鬼首于此地一、故為二邑名一、又去二大物忌石一三町餘、有二大石一、曰二丈石一。
其二、號二寒風澤一、又称二一之瀧一、治二諸瘡・目疾・婦人血病一。
其三、號二吹上湯一、或称二気吹穴一、湯気蒸升一丈餘、故名レ之、又曰二新瀧一、治二浸淫瘡しんみそう之類一、以上三湯、不レ詳二何時湧出一。
古塁　一、號二鬼切邊館一、或称二鬼冑おにかぶと城一、伝云、阿部頼時あべよりとき所レ居也。
道　一、往二玉造郡一道。
橋　一、土橋、長　十間、濶　二間、（宇留川淵）。
金田荘花山邑、
戸口　凡　二百六。
神社　凡　三、
蔵王権現社、在下號二御嶽一地上、伝云、此嶽満山石楠花しゃくなげ長茂、故呼レ邑曰二花山一。
貴船神社、不レ詳二何時勧請一。
春日神社、在二古塁一、同レ上。
仏宇　凡　四、
不動堂、不レ詳二何時創建一、伝云、本尊三仏共運慶所レ造、有二鰐口一、記曰、弘治年中、狩野兵庫頭為直かのうひょうごかみためなお、希文　按、弘治之號、後奈良帝御宇也、名跡志曰、堂宇飛騨工匠所レ建、有レ寺、號二金峯山花山寺一。
馬頭観音堂・虚空蔵堂・大日堂、伝云、以上三堂、曰二駒形根里宮一、本尊各春日所レ造、往古駒嶽南向大門駒形根里宮、安下置馬頭観音於本邑號二駒山一地上、隔二八里一、本邑號二拝殿一、駒形神社之事、詳二于沼倉邑條下一。
寺　凡　二、
金峯山花山寺、真言宗、京都智積院末寺、不レ詳二何時何人開山一。 満福寺山城国寺、曹洞宗、羽州黒瀧、向川寺派、能州総持寺末寺、伝云、竹室良厳和尚開山、不レ詳二其年月一、此寺初在下號二坊宅一地上、而號二浄泉院一、狩野兵庫頭為直かのうひょうごかみためなお牌寺也、後陽成帝、慶長中、賜二本邑乎遠藤式部玄信えんどうしきぶはるのぶ一、移二此地一、改二號城国寺一、乃玄信法謚はるのぶほうし也。
孝子　一人、大町検断太郎兵衛おおまちけんだんたろうひょうえ、奉二養父母一、竭つくすレ力致レ孝、中御門帝、享保十九年九月、賜レ金賞レ之。
旧跡　一、伝云、本邑號二大御堂一地、往古有二七間四面道一、而安二置不動及丈六阿彌陀一、有二其門一處、曰二大門宅一、今荒廃、惟存二礎址一、有下號二閼伽井あかい澤一地上、古昔有二蓮池一、而池中有レ島掛レ鐘、其池今為二野田一、猶存二島容一、彼所レ掛之鐘、乃今仙台府下、龍寶寺所レ掛是也。
古塁　凡　二、
其一、號二淵牛館一、伝云、古昔安部貞任あべさだとう所レ居也。
其二、號二巳ノ口館一、狩野兵庫頭為直かのうひょうごのかみためなお所レ居也、為直十世孫狩野甚左衛門かのうじんさえもん、今為二遠藤家僕一。
老櫻樹　一、周匝しゅうそう可二三丈八尺一、木皮凝聚ぎょうじゅう（一か所にこり集まること）如レ癅こぶ、土人呼レ之曰二千貫瘤こぶ一。
金田荘川口邑、
戸口　凡　三十四、有二市店一而駅也、宿老遠藤内匠善信えんどうたくみよしのぶ采地、有二其家所レ受之地一、故邑民少名。
神社　凡　二、
神明蛭子社、不レ詳二何時勧請一。
牛頭天王社、同レ上。
/ 仏宇　一、瀧不動堂、不レ詳二何時創建一。
寺　凡　二、 天王山洞林寺、曹洞宗、本郡真坂邑、龍雲寺末寺、伝云、後奈良帝、弘治元年、印翁和尚開山。
了智山法壽寺、浄土真宗、京都本願寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。 橋　一、土橋、長　十四間、濶　二間半、（馬鳴）。
金田荘島體邑、
戸口　凡　五十七。
神社　凡　三、
熊野神社　三、共不レ詳二何時勧請一。
寺　凡　二、
長水山吉祥寺、曹洞宗、本郡真坂邑、龍雲寺末寺、伝云、龍雲寺第五世、宥室宗恕和尚開山、不レ詳二其年月一、寺僧曰、往古有二三寺一、號二中正寺・光隆寺・吉祥寺一、祈二佐藤庄司さとうしょうじ父子三人冥福一、安二置彌陀・薬師・観音於三寺一、今惟存二観音一、希文　按、寺僧曰、開山宗恕和尚、慶長七年十二月遷化、以レ是考レ之、則正親町帝、天正中、或後陽成帝、文禄之頃開山乎、佐藤莊司さとうしょうじ、時世相去甚遠、想夫往古何人開山、而宗恕和尚中興開祖也歟、名跡志曰、有二古墳一、記二貞治二年二月三日一、貞治、九十九代後光厳帝、十二年癸卯みずのとう也。
熊野山増興院、曹洞宗、本郡花山邑、城国寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
古塁　凡　二、
其一、伝云、狩野式部少輔かのうしきぶしょうゆう（諱不レ伝）所レ居、名跡志曰、一説曰二赤松館一、是乃佐藤莊司さとうしょうじ長子次信つぎのぶ旧居也、館下有レ寺號二長水山吉祥寺一。
其二、伝云、狩野大膳かのうだいぜん（諱不レ伝）所レ居也。
川　一、一ノ迫川、源出レ自二本郡花山邑・羽州秋田界四段坂一、至二二ノ迫姉歯邑一、會二二ノ迫川一。
金田荘清水目邑、
戸口　凡　十八。
神社　凡　三、
山神社、不レ詳二何時勧請一。
神明宮、同レ上。
羽山権現社、同レ上。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
尾松荘長崎邑、
戸口　凡　五。
神社　凡　五、
八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
愛宕神社、同レ上。
新山権現社、同レ上。
三島神社、同レ上。
葉山権現社、同レ上。
仏宇　凡　二、
不動堂、不レ詳二何時創建一。
観音堂、同レ上。
寺　凡　二、
御影山廣最寺、曹洞宗、羽州村山郡半郷邑、安養寺末寺、伝云、後小松帝、応永十三年、金庵融眞和尚開山。
金花山法幢寺、曹洞宗、本郡真板邑、龍雲寺末寺、伝云、正親町帝、元亀元年、龍雲寺第四世、快室慶悦和尚開山。
古塁　凡　四、
其一、號二鹿込館一、不レ詳二何人所一レ居。
其二、號二佐野館一、同レ上。
其三、號二境館一、同レ上。
其四、同レ上、土人云、古来伝云、長崎四郎ながさきしろう居二此地之館一、其所レ居之館、四處之中不レ詳二何館一、名跡志曰、有二両館一、上館曰二小坂本館一、相伝、秀衡ひでひら家臣長崎四郎ながさきしろう古塁也、希文　按、今與二土人所レ言者一不レ合、未レ審。
道　凡　二、共往二玉造郡一道。
瀑布　一、在二不動堂邊一、直下二丈一尺餘、横一間半許。
橋　凡　三、各土橋、長　七間、濶　二間、（高橋小坂・本荒町頭）。
姫松荘大川口邑、
戸口　凡　三十六、公族上遠野伊豆廣秀かどのいずひろひで采地。
神社　一、八幡鷲宮権現、一社相殿祭レ之、伝云、上遠野かどの家居二岩城一時所二勧請一、而従二上遠野かどの家一移二之于本邑一。
仏宇　一、不動堂、不レ詳二何時創建一、伝云、五百年来之堂也。
瀑布　一、無音瀧、高一丈、横二間、希文　按、以二能因詠歌一考レ之、則昔川蓋其阿流也歟、名跡志曰、在二昔河畔一、水頭有二不動堂一、土人曰二古昔いにしえ川一。
姫松荘真坂邑、
戸口　凡　二百六十一、白河上野村祐しらかわこうずけのむらすけ采地、有二市店一而駅也、有下號二北澤一地上、曰二之高松荘一。
神社　凡　七、
八幡宮、伝云、天智帝御宇、三條大臣さんじょうだいじん第三子、中原少将實義朝臣なかはらしょうしょうさねよしあそん所二勧請一也。
保呂羽権現社、同レ上。
山神社、在二北澤一、伝云、武烈帝、性行暴戻せうこうぼうれい（人の性質とふだんのおこない、狂っているように暴力的で、道理に反していること）、配二于此地一、崩御之後、陵上立レ社、称二山神一、陵之所レ在、號二天平山一、毎歳八月朔日祭レ之、皇居之地称二王澤宅一、有二帝宸影一、蔵二于當修験大性院家一、又有二宸衣錦裂一、今甚蠧しみ（むしばむ）食損壊、希文　按、帝暴行及崩葬、正史所レ記分明、而無二配流之事一、是亦據よりレ何而附ふ二會かい（付け加えること。つなぎあわせること）此妄説一乎。
熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
白山神社、同レ上。
三島神社、同レ上。
山神社、同レ上。
仏宇　凡　三、
大日堂、不レ詳二何時創建一。
太子堂、同レ上。
不動堂、同レ上。
寺　凡　二、
瑞澤山龍雲寺、曹洞宗、越後州村上、耕雲寺末寺、伝云、嘯しょう山宗虎和尚開山、不レ詳二其年月一、永正八年、宗虎遷化せんげ以来二百五十五年也、希文　按、永正之號、後柏原帝御宇、以レ是考レ之、則後土御門帝、文明・長亨之比開山乎。
福壽山起雲寺、曹洞宗、本邑龍雲寺末寺、伝云、即翁慶覚和尚開山、不レ詳二其年月一、弘治元年、慶覚遷化せんげ（高僧の死亡を、婉曲的に、かつ、敬っていう語）以来二百九年也、希文　按、弘治之號、後奈良帝御宇、以レ是考レ之、則同帝御宇、亨禄・天文之比開山乎。
倉廩　一、儲蓄(ちょちく)雑穀。
古塁　凡　四、
其一、號二真板館一、伝云、狩野伊豆高實かのういずたかざね所レ居也。
其二、號二姫松館一、伝云、居山雅樂丞いやまうたのじょう（諱不レ伝）所レ也。
其三、號二玉澤宅一、伝云、武烈帝ぶれつてい皇居之地也。
其四、不レ詳二何人所一レ居。
川　一、一ノ迫川。
橋　凡　三、各土橋、
其一、長　六間、濶　二間。
其二、長　七間、横　二間、（北澤）。
其三、長　五間、横　一間半、（同レ上）。
姫松荘清水邑、
戸口　凡　四十五。
神社　凡　十、
八幡宮　三、共不レ詳二何時勧請一。
熊野神社　凡二、共同レ上。
諏訪神社、同レ上。
神明宮、同レ上。
蔵王権現社、同レ上。
雲南権現社、同レ上。
明神社、在二古塁西一、小祠也、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　凡　二、
観音堂、不レ詳二何時創建一。
不動堂、同レ上。
寺　一、圓通山普門寺、曹洞宗、本郡真坂邑、龍雲寺末寺、伝云、正親町帝、元亀元年、快室慶悦和尚開山。
古塁　一、伝云、鹿野和泉しかのいずみ（諱不レ伝）所レ居。
泉　凡　三、伝云、邑名所二以出一也。
橋　凡　二、各土橋、
其一、長　十二間、濶　二間半、（吉淵塞）。
其二、長　十間、濶　二間半。
姫松荘曽根邑、
戸口　凡　三十八。
神社　凡　三、
八幡宮　二、共不レ詳二何時勧請一。
羽黒権現社、同レ上、土人伝云、自レ古安二置五百羅漢一。
川　一、一ノ迫川。
金田荘柳目邑、
戸口　凡　八十八。
神社　一、白山権現社、不レ詳二何時勧請一。
寺　一、石柳山妙教寺、日蓮宗、駿州富士郡、大石寺末寺、伝云、後宇多帝、弘安十年、日蓮上人法子日目上人開山。
古塁　一、伝云、三浦左馬之助みうらさうまのすけ（諱不レ伝）所レ居。
道　一、往二玉造郡一道。
橋　一、土橋、長　八間、濶　二間。
金田荘狐﨑邑、
戸口　凡　四十二。
神社　凡　五、
稲荷社、不レ詳二何時勧請一。
天神宮、同レ上。
白山神社　二、共同レ上。
熱田明神・子安明神社、二神相殿祭レ之、同レ上。
仏宇　一、
不動堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、福源山城皇寺、曹洞宗、本郡下宮野邑、能持寺末寺、伝云、正親町帝、永禄八年、叟室和尚開山。
古塁　一、伝云、大場萬次郎おおばまんじろう（諱不レ伝）所レ居。
橋　一、土橋、長　六間、濶　二間、（川崎下）。
一ノ迫下郷金田荘上宮野邑、
戸口　凡　四十三、以下至二嶺﨑邑一、凡　十七邑、曰二下郷一、早川齋惟義はやかわさいこれよし采邑。
神社　凡　五、
八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
白山権現社、同レ上。
新山権現社、同レ上。
一ノ宮権現社、伝云、安寧帝皇子、嘗流二落于此地一、今其所曰二一ノ宮一、帝崩御之後、皇子築二陵于此地一、以祭レ之、邑名亦本レ之。
二ノ宮権現社、土人不レ伝二其来由一、称二帝一ノ宮一、称二皇子二ノ宮一、祭レ之乎。
仏宇　凡　二、
毘沙門堂、不レ詳二何時創建一、伝云、本尊伝教大師作。
観音堂、同レ上。
寺　凡　二、
玉容山洞陰寺、曹洞宗、桃生郡深谷荘牛網邑、法昌寺末寺、伝云、後光明帝、正保三年、清翁和尚開山。
倉廩　一、儲蓄ちょちく雑穀。
壇　一、號二王壇一、在二一ノ宮東北方一。
川　一、一ノ迫川。
金田荘成田邑、
戸口　凡　三十二。
白山権現社、不レ詳二何時勧請一。
運南権現社、同レ上。
剣社、同レ上。
川　一、一ノ迫川。
姫松荘下宮野邑、
戸口　凡　百二十九、有二市店一而駅也。
神社　凡　八、
神明宮、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮　二、
其一、伝云、後奈良帝、天文十年、旧邑主宮野豊後定弘みやのぶんごさだひろ、勧二請大崎八幡一。
其二、不レ詳二何時勧請一。
牛頭天王社、不レ詳二何時勧請一。
雲南権現社、同レ上。
天神宮、伝云、正親町帝、天正十一年、宮野豊後みやのぶんご所二勧請一也。
愛宕神社、同レ上。
熊野神社、伝云、後柏原帝、文亀三年八月、旧邑主宮野駿河直定みやのするがなおさだ勧請、其後大崎彦三郎高兼おおさきひこさぶろうたかかね建二華表かひょう（神社の鳥居）一、後奈良帝、弘治二年四月、加美郡高根城主、仁木遠江にきとうとうみ（諱不レ伝）獻たてまつる二鰐口一。
寺　凡　二、
高木山妙圓寺、日蓮宗、駿州富士郡、大石寺末寺、伝云、後宇多帝、弘安十年、日目上人開山也。
数珠山能持寺、曹洞宗、羽州最上郡新庄、向川寺末寺、伝云、後花園帝、康正元年、可屋和尚開山、本尊虚空蔵、聖徳太子所レ造也。
倉廩　一、租米、（號二大仏一地、往年有二倉廩一、其後移二于二ノ迫姉歯邑一、明和六年復二旧地一）。
孝子　一人、邑民甚六じんろく、事レ母致レ孝、今上帝、寶暦五年三月、賜レ金賞レ之。
古塁　一、伝云、宮野豊後(みやのぶんご所レ居也。
川　一、一ノ迫川。
金田荘留場邑、
戸口　凡　五十二。
神社　一、明神社、伝云、有二松一株一、古来称二明神松一、而無レ祠、獅山君巡狩之時、有レ命建レ祠、不レ詳レ祭二何神一。
仏宇　一、虚空蔵堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、留場山法障寺、曹洞宗、本郡下宮野邑、能持寺末寺、伝云、後水尾帝、慶長十四年、能持寺第五世、繁松林茂和尚開山。
川　一、一ノ迫川。
沼　凡　二、
内沼、接二本邑及太田・八澤・佐沼新田四邑之地一。
伊豆沼、或曰二鳩岡沼一、周匝しゅうそう三千六間、接二本邑及萩澤・畑岡・佐沼新田四邑之地一、品井・廣淵・伊豆、称二之封内三大湖一。
橋　一、土橋、長　三十二間、濶　三間、（一ノ迫川）。
金田荘堀口邑、
戸口　凡　九十一。
神社　凡　二、
鹿島神社、不レ詳二何時勧請一。
新山権現社、同レ上。
寺　一、金龍山長興寺、曹洞宗、本郡澤邉邑、全慶寺末寺、伝云、岳翁壽峯和尚開山、不レ詳二其年月一。
古塁　一、號二西館一、伝云、大庭彦七郎おおばひこしちろう（諱不レ伝）所レ居。
刈敷邑、
戸口　凡　百七十二、有下號二伊豆野新町一駅上、此處為二姫松荘一。
神社　凡　四、
白山権現社、不レ詳二何時勧請一。
山王権現社、同レ上。
若宮八幡社、同レ上。
稲荷社、在二伊豆野新町一、伝云、後冷泉帝、康平中、源頼義みなもとよりよし朝臣、東征之時、所二勧請一也、高倉帝、治承中、罹二野火一、爾後じご荒廃巳久、後光明帝、承応中、古内主膳重廣ふるうちしゅぜんしげひろ造二営之一。
寺　凡　二、
鳳凰山大光寺、曹洞宗、本郡三迫澤邊邑、全慶寺末寺、伝云、後奈良帝、天文十年、最厳和尚開山。
金針山龍昌寺、曹洞宗、磐井郡一関、願成寺末寺、伝云、霊元帝、延寶元年、桂岩和尚開山。
倉廩　一、租米。
古塁　一、伝云、刈敷右馬之允かりしきみぎうまのじょう（諱不レ伝）所レ居。
金田荘八樟やつくぬぎ邑、
戸口　凡　八十二、西大條四郎賀直にしおおえだしとうよしなお采邑。
神社　凡　三、
伊豆野権現社、伝云、此社、旧在二本郡築館邑一、後西帝、明暦三年、移二于本邑笹森一、不レ詳レ祭二何神一。
牛頭天王社、不レ詳二何時勧請一。
樟明神社、不レ詳三何時祭二何神一、有二樟くぬぎ樹一、伝云、邑名本レ之。
寺　一、八樟山興福寺、真言宗、仙台府下、龍寶寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
金田荘沼崎邑、
戸口　凡　七十五。
神社　凡　二、
熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
寺　一、得蔵山杖林寺、曹洞宗、本郡一ノ迫下宮野邑、能持寺末寺、伝云、後奈良帝、天文五年、春翁宗林和尚開山。
孝婦　二人、邑民喜右衛門きうえもん属人、伊三郎いさぶろう女むすめ平助へいすけ妻、同人孫女まごむすめ茂七もしち妻、同邑正右衛門せいうえもん酗さかかりレ酒（酒に酔い狂う）、與二伊三郎いさぶろう妻一争論創きずをつけるレ之、両人之女、走来冐二白刃一、救二老母・祖母之急難一、櫻町帝、延享四年十月、各賜レ金賞レ之。
古寺跡　一、伝云、古昔有レ寺、號二大良山萬年寺一、不レ詳二何時荒廃一、今其遺址為二野田一。
古塁　一、伝云、沼田四郎ぬまたしろう（諱不レ伝）所レ居。
金田荘梅崎邑、
戸口　凡　二百四十六。
神社　凡　十、
牛頭天王社、不レ詳二何時勧請一。
熊野神社　二、共同レ上。
愛宕神社　二、共同レ上。
八幡宮、同レ上。
天神宮、同レ上。
白山権現社　二、共同レ上。
羽黒権現社、同レ上。
仏宇　一、不動堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、梅花山法泉寺、曹洞宗、本郡一ノ迫下宮野邑、能持寺末寺、伝云、正親町帝、天正十三年、春翁和尚開山。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。
橋　一、土橋、長　八間、濶　一間半、（大平）。
姫松荘畑岡邑、
戸口　凡　百九十六。
神社　凡　五、
飯綱権現社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
第六天社、同レ上。
熊野神社、同レ上。
明神社、不レ詳三何時祭二何神一。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。
川　一、熊谷川、源出レ自下本郡梅﨑邑號二熊谷一地上、而入二本邑伊豆沼一。
萩澤邑、
戸口　凡　五十一。
神社　凡　三、
新山権現社、不レ詳二何時勧請一、名跡志曰、土人曰二之新山権現一、是乃和我神社わがじんじゃ也、希文　按、和我神社、延喜式神名帳所レ謂、栗原郡七座之其一也。
荒神社、同レ上。
平野神社、同レ上。
寺　一、光露山光明寺、曹洞宗、一ノ迫下宮野邑、能持寺末寺、伝云、霊元帝、天和元年、林茂和尚開山。
古塁　凡　二、
其一、伝云、大場大炊之丞おおばおおうのじょう（諱不レ伝）所レ居。
其二、三塚大隅みつつかおおすみ（諱不レ伝）所レ居也。
橋　凡　二、各土橋、長　八間、濶　二間。
大田邑、
戸口　凡　三十八。
神社　凡　二、
愛宕神社、不レ詳二何時勧請一。
雲南権現社、同レ上。
寺　一、大澤山耕田寺、曹洞宗、本郡高泉邑、龍泉寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
孝子　一人、邑長甚内じんない、奉二養祖父及老母一、盡レ心致レ孝、櫻町帝、元文二年七月、賜レ金賞レ之。
八澤邑、
戸口　凡　三十九。
神社　凡　二、
白旗神社、不レ詳二何時勧請一。
道祖神社、同レ上。
寺　一、高水山養澤寺、曹洞宗、遠田郡田尻邑、東渓寺末寺、伝云、大輪全察和尚開山、不レ詳二其年月一。
金田荘照越邑、
戸口　凡　四十七、公族黒木庄三郎くろきしょうさぶろう采邑。
神社　凡　四、
月山権現社、不レ詳二何時勧請一。
熊野権現社、同レ上。
隆松権現社、同レ上。
山神社、同レ上。
寺　凡　二、
月照山観性寺、真言宗、武州江戸、真福寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
金寶山金蔵寺、真言宗、仙台府下、龍寶寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。
　 橋　凡　二、各土橋、
其一、長　八間、濶　二間、（大川原）。
其二、長　六間、濶　二間、（山神）。
金田荘築館邑、
戸口　凡　百六十八、有二市店一而駅也。
神社　凡　四、
天神宮、不レ詳二何時勧請一。
新山権現社、同レ上。
楫取御児かとりみこ神社、同レ上、希文　按、是乃延喜式神名帳所謂、栗原郡七座之其一、香取御子かとりみこ神社也歟、名跡志曰、青野二本木地有二社地一、立二叢祠そうし一、是乃往古香取御子神社也、一説、二ノ迫富邑黒瀬有二鹿島神社一、以二香取御子一為二相殿一是乃此神也。
神明宮、同レ上、名跡志曰、土人曰二之伊勢宮一、乃古之雄鋭おとの社也、希文　按、雄鋭神社、神名帳所レ謂、栗原郡七座之其一也。
仏宇　凡　二、 薬師堂、伝云、孝謙帝勅願所、而天平寶字四年三月草創、有レ寺天台宗、而號二醫王山興福寺一、不レ詳二何人開山一、本尊薬師・十二神・四天王、共伝教大師所レ造、観音・地蔵各二体、共慈覚大師作。彌陀恵心僧都そうず作、彌陀三尊各唐仏・其餘多二古仏一、村上帝、天徳二年、堀河帝、嘉保三年、花園帝、正和三年、後柏原帝、永正四年、後光明帝、承応三年、各改造、往古有二衆徒一、而国主寄二附田地一、今悉荒廃、改二天台宗一為二曹洞一、改二號雙林寺一、名跡志曰、廃帝、四年所レ建、號二寶宇一、其像伝教大師作也、有レ寺、號二醫院王山叢林寺一、土人曰二之杉薬師一、按、伝教、称徳帝、神護景雲元年丁未生、廃帝四年壬寅、前二于伝教一六年、然則曰二伝教作一、恐妄也、若廃帝四年、建レ之之説誤乎、識者辨レ之。
観音堂、不レ詳二何時創建一、伝云、本尊春日所レ造也。
寺　凡　二、 醫王山雙林寺、曹洞宗、本郡一ノ迫下宮野邑、能持寺末寺、伝云、古昔號二興福寺一、天台宗、而孝謙帝、天平寶字四年開基、不レ詳二何時何人開山一、正親町帝、天正之比、改二宗曹洞一、改二號雙林一。
金田山通大寺、曹洞宗、本郡一ノ迫真坂邑、龍雲寺末寺、伝云、後柏原帝、永正十三年、松庵文徹和尚開山。
倉廩　一、儲蓄雑穀。
古塁　凡　二、伝云、共大場宮内おおばくない（諱不レ伝）所レ居。
古寺跡　一、伝云、醫王山興福寺遺址也。
橋　凡　八、各土橋、
其一、長　九間、濶　二間、（足清水）。 其二・三・四・五、各長　八間、濶　二間半、（伊豆野堰・足清水）。
其六、長　七間、濶　一間、（伊豆野堰）。
其七・八、各六間半、濶　一間、（同レ上）。
姫松荘芋曽根邑、
戸口　凡　三十三。
神社　凡　三、
愛宕神社、不レ詳二何時勧請一。
雲南権現社、同レ上。
見当権現社、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　一、観音堂、不レ詳二何時創建一。
姫松荘嶺﨑邑、戸口　凡　九。
尾松荘文字邑、
戸口　凡　百九十一、以下至二城生野きのうの邑一、凡　十四邑曰二二ノ迫一、至二片子澤邑一、凡　六邑曰二之上郷一。
神社　凡　三、
駒社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
愛宕神社、同レ上。
寺　一、普門山洞泉院、曹洞宗、本郡鶯沢邑、金剛寺末寺、伝云、明正帝、寛永十四年、稜南統異和尚開山。
橋　一、土橋、長　十七間、濶　二間、（関谷）。
金田荘鶯澤うぐいすさわ邑、
古塁有レ澤、曰二鶯澤うぐいすさわ一、故為二邑名一、戸口　凡　三百五十三、有二號レ袋地一、曰二之尾松荘一。
神社　凡　二十八、
八幡宮、伝云、源頼義みなもとよりよし朝臣、東征之時、所二勧請一也。
天神宮、不レ何時勧請一。
愛宕神社、同レ上。
照井権現社、同レ上、不レ詳レ祭二何神一。
諏訪神社、同レ上。
稲荷社、同レ上。
荒神社、同レ上。
白山権現社　二、共同レ上。
月山権現社、同レ上。
山神社　二、共同レ上。
駒形根大明神社、同レ上。
伊豆権現社、同レ上。
馬神社、伝云、瘞うずめる下源義経みなもとよしつね所レ乗、大夫黒たゆうくろ之母馬上之地、立祠祭レ之。
新山権現社、不レ詳二何時勧請一。
牛頭天王社、同レ上。
保呂羽権現社、同レ上。
早坂明神社、同レ上、不レ詳レ祭二何神一。
八所権現社、同レ上。
島廻明神社、同レ上。
熊野権現社、伝云、後冷泉帝、天喜中、源頼義朝臣、東征之時、所二勧請一也、名跡志曰、天喜五年、源頼義、東征之時、建二熊野三社於山上一、以祭レ之、秋七月落成、仍したがって以二秋法一為二社號一、取二義於肅殺(しゅくさつ)（秋の気が草木を枯らすこと）之事一。
蔵王権現社　二、其一、在二熊野社地一、其二、在下號レ袋地上、共不レ詳二何時勧請一。
大黒社、同レ上。
若一王子社、同レ上。
牛頭天王社、在二號レ袋地一、同レ上。
熊野権現社、同レ上。
仏宇　凡　十一、
薬師堂、不レ詳二何時創建一。
不動堂、同レ上。
大天魔狗堂　二、共同レ上。
太子堂、同レ上。
観音堂、同レ上。
金剛童子堂、在二熊野社地一、同レ上。
妙智童子堂、同レ上。
普賢堂、同レ上。
文珠堂、同レ上。
観音堂、同レ上。
寺　凡　三、 鶯澤山金剛寺、曹洞宗、加美郡上多田川邑、圓幢院えんどういん末寺、伝云、後水尾帝、寛永中、稜南統異和尚開山。
熊野山宗法寺、天台宗、仙台府下、仙岳院末寺、伝云、後冷泉帝、天喜中、紀州那智山誓厳寺應昭法印弟子、應明法印開山、星霜之久、無住而荒廃、霊元帝、天和中、満海法印、為二仙岳院末寺一。
岩松山満蔵寺、曹洞宗、玉造郡下眞山邑、眞昌寺末寺、伝云、後陽成帝、文禄四年、眞昌寺第二世、門苞もんほう泉富和尚開山。
孝子　一人、邑民権三郎ごんさぶろう、事レ母、奉養竭つくすレ力、今上帝、明和元年四月、賜レ金賞レ之。
古塚　一、伝云、古昔遊行上人到二于此地一遷化せんげ、所レ葬之塚也、乃號二其地一曰二藤澤一。
節女石墳、伝云、玉造郡磯田之産、小林修理こばやししゅり（諱不レ伝）女むすめ鍋子墓也、石上方二尺、深一尺許、有二潦水ろうすい（たまり水）一、土人呼二此石一曰二菩提石一、名跡志曰、文字邑境在二田中一、高　九尺五寸、濶　一丈三尺、相伝、往昔玉造郡磯田邑、有二小林修理こばやししゅり者一、年壮ねんそう（年が若く元気盛んなこと、元気盛んな年ごろ）赤貧せきひん（何一つ所有物がないほどの、ひどい貧乏）殊甚、以三其幼女難二養育一、與二之郷人一而絶二音信一、生長後流落、被レ售うる二倡家しょうか（娼婦を置いて客をとる家、遊女屋、女郎屋）一、容貌ようぼう国色人相競、餘修理入二彼倡家しょうか一、而偶與レ之逢、女むすめ知二其父一辞レ之、且甚耻はじるレ之、投二于河水一而死、郷人哀二悼其節義せつぎ（志を変えず、人としての正しい道をかたく守ること）一、立レ石以吊レ之、古墳今猶存、郷人曰二之菩提石一、有レ寺號二鶯澤山金剛寺一、修理悲慕ひぼ（しのび）之餘所レ建也、寺中有二遺像一、高　八寸、有二牌子一、記曰、金剛院殿正外了體大姉、明暦二年八月十九日、希文　按、明徳之號、後小松帝御宇也。
古塁　凡　三、
其一、伝云、橘遠江たちばなとうとうみ（諱不レ伝）所レ居。
其二、不レ詳二何人所一レ居、有レ澤曰二鶯澤うぐいすさわ一、邑名本レ之。
其三、同レ上。
橋　一、土橋、長　五間、濶　一間半。
鉛山、在下號二細倉一地上。
尾松荘稲屋敷邑、
戸口　凡　百三十六。
神社　凡　十一、
八社権現社、称レ之曰二高松権現一、不レ詳二何時勧請一、伝云、古昔有レ寺、曰二春日山大勝院高松寺一、有二末社七社一、名跡志曰、有二古鰐口二一、其一記曰、善喜二年三月日、其二記曰、寄二附鰐口一器于陸奥長岡郡荒谷郷安養寺一、時寛正三年壬二月二十四、願主常徳、善喜年號不レ見、用二喜字乎下一者、後醍醐帝延喜、後冷泉帝天喜、後堀河帝寛喜外無レ有レ之、寛正、百三代後花園帝三十四年也、依二此記一、而曾知二栗原乃古之長岡郡一也、其精舎在二荒谷一、而適以二此器一而蔵二此寺院一乎。
若宮社、不レ詳二何時勧請一。
白山神社、同レ上。
卯南社、同レ上。
金田社、同レ上。
賓領社、同レ上。
月山社、同レ上。
箱根社、同レ上、以上七社、高松権現末社、而在二邑中處處一、合為二八社一。
愛宕神社、不レ詳二何時勧請一。
八面大荒神社、同レ上。
大鳥井大荒神社、同レ上、伝云、右両社駒形根大明神末社也。
仏宇　一、不動堂、有レ泉、曰二不動清水一、不レ詳二何時創建一、伝云、古昔有レ寺、號二水馬山道山寺一、今荒廃、惟存二其名一。
寺　一、愛宕山法蔵寺、真言宗、本郡三ノ迫岩ケ崎、清水寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
倉廩　一、儲蓄雑穀。
古塁　一、號二稲瀬城一、森因幡もりいなば（諱不レ伝）所レ居。
泉　一、號二不動泉一。
古塚　一、號二九戸壇一、伝云、後陽成帝、天正十九年九月、南部九戸城主、九戸左近将監政實くのへさこんしょうげんまさざね、於二此地一刎ふんレ首しゅ（首を刎ね）埋二其屍一。
川　凡　二、
下熊川、源出レ自二本郡鶯澤邑、照井権現社地一、而至二姉歯邑一、入二一ノ迫川一。
無音川、源出レ自二本郡文字邑一、至二富邑一、會二一ノ迫川一。
橋　凡　三、各土橋、
其一、長　三十六間、濶　二間半、（島廻）。
其二、長　十三間、濶　二間、（下熊川）。
其三、長　十間、濶　二間、（飛騨）。
高松荘八幡邑、
戸口　凡　五十一。
神社　凡　七、
八幡宮、伝云、桓武帝、延暦中、坂上田村麻呂さかうえたむらまろ勧請、後冷泉帝、天喜中源頼義みなもとよりよし朝臣・義家よしいえ朝臣、東征之時、祈レ之得二勝利一、奉二納甲冑一、寄二附祭田一、安徳帝、壽永中、源義経みなもとよしつね追二討平家一時、倣ほう（ならう）二祖先之嘉例一、祈二於斯この社一、藤原秀衡ふじわらひでひら造二営宮殿一、且建二両寺一、號二北治山源東寺・城服山随泉寺一、後陽成帝、天正之末、葛西かさい・大崎おおさき両家滅亡之後、両寺亦荒廃、惟存二遺址一、名跡志曰、郷説所レ蔵、甲冑二領、其一則義家よしいえ朝臣所二奉納一、六十二行鍪兜すじかふと・前三段垂篠しのたれ・上竅菊花蔓藻・□しころ五段蔽耳ふかきへし・廣表おおめし・額飾くはがた一尺二寸、上形三寸五分、下減二五分一、座金・菊花・頷下むちいた、濶　八寸六分、長　二寸、其下腹とう板　一尺、下散板くさすりいた、九寸、菱縫板、包以革共八、下□檀板菊藻、紺絲縦穿割札おとしわりさね、其一則筑前守者所二奉納一冑七寸五分。圍六寸二分、□五段疎綴すかけ、胸板八寸、其下亦同、下散八寸五分、八行一段、各異二其色一、紅・紺・緑・紺・緑・碧、腰佩はいたて一尺六寸、長　八尺五寸、社中旧物也、鰐口一器、是亦旧物也、有レ銘曰、北治山源東寺、延慶えんぎょう四年壬亥みずのえ正月五日、大且那大麥生だいだんなだいむぎふ、藤内次郎国正ふじないじろうくにまさ、按、延慶四年壬亥、九十四代花園帝、慶長元年辛亥也、壬辛字誤也、□字俗間用レ之、冑衿、考二字書一無二此字一、俗字也、今取レ之、則錏字義近レ之、於加切音鵶、錏しころ、鍛、頸ノ鎖、誤二此字一乎、大麥生だいむぎふ姓氏乎、蓋郷農之長者乎。
高良明神社、伝云、此下六社、八幡宮之末社、而坂上田村麻呂さかうえたむらまろ所二勧請一也。
山王権現社、同レ上。
山神権現社、同レ上。
子守権現社、同レ上。
白山権現社、同レ上。
雲南権現社、同レ上。
旧跡　凡　三、
屯たむろ岡、在二八幡宮西一、伝云、坂上田村麻呂さかうえたむらまろ、源頼義みなもとよりよし朝臣父子所二陣営一也。
城服山随泉寺遺址、伝云、安徳帝、壽永中、藤原秀衡ふじわらひでひら所二創建一也、今荒廃惟存二其名一。
北治山源東寺遺址、同レ上。
古塁　一、號二伏牛館一、大崎家臣、石川蔵人いしかわくらうど（諱不レ伝）所レ居。
川　一、下熊川。
高松荘櫻田邑、
戸口　凡　八十七。
神社　凡　三、
山神社、伝云、二十六代武烈帝、性行暴戻、配二於本州一、久我大部くがだいぶ・鹿野掃部之祐しかのかもんのすけ、両人扈従こじゅう、在下於本郡一ノ迫真板邑號二北澤一地上、崩御之後、葬二于天王山中一、建レ社祭レ之、称二山神一、掃部之祐かもんのすけ来住二于本邑一、宅地亦建二其社一祭レ之、今為二本邑之鎮守一、希文　按、正史所レ記分明、據レ何附二會此説一乎、妄誕之説不レ可レ信焉、姑記二其所一レ伝耳。
正八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
伊豆野権現社、同レ上。
寺　一、亀井山松岩寺、曹洞宗、本郡三ノ迫岩个﨑邑、黄金寺末寺、伝云、後柏原帝、永正十四年丁丑、正忠和尚開山。
古塁　凡　二、共不レ詳二何人所一レ居。
金田荘片子澤邑、
戸口　凡　八十二。
神社　凡　十二、
鳥合神社、伝云、嵯峨帝御宇之古社、而星霜九百餘年也、名跡志曰、相伝、由理岩自愛之鷹児緑九社、後人哀二為レ主溺死一、建レ祠祭レ之、称二新山権現一、或曰、秀衡ひでひら所レ建也、別当宅曰二鳥屋敷一。
伊夜比子社、伝云、鳥合神社之末社也、不レ詳レ祭二何神一。
伊豆権現社、同レ上。
諏訪明神社、同レ上。
箱根権現社、同レ上。
仙人権現社、同レ上、不レ詳レ祭二何神一。
大黒社、同レ上。
五所皇子社、同レ上、不レ詳レ祭二何神一。
八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
天神宮、同レ上。
羽黒権現社、同レ上。
妙見社、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　一、弁財天堂、在二鳥合社地一、不レ詳二何時創建一。
寺　一、瑞澤山泉昌寺、曹洞宗、越後州、耕雲寺末寺、伝云、耕雲寺第五世、徳嶽宗欽和尚開山、星霜二百八十四年、希文　按、以レ是考レ之、則すなわち後土御門帝、文明中開山乎。
古塁　凡　二、
其一、伝云、千葉但馬ちばたじま（諱不レ伝）所レ居。
其二、伝云、佐藤河内さとうかわち（諱不レ伝）所レ居。
橋　一、土橋、長　七間、濶　二間。
高松荘下郷渡九邑、
戸口　凡　五十、以下至二城生野邑一、凡　八邑、曰二下郷一。
神社　一、駒形権現社、不レ詳二何時勧請一。
泉澤邑、
戸口　凡　十三。
神社　凡　二、
深山権現社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
菱沼邑、
戸口　凡　二十七、有下號二真似牛一地上、詳二加美郡王城寺邑條下一。
神社　一、御嶽権現社、不レ詳二何時勧請一。
寺　一、箱根山往生寺、浄土宗、下野州大澤、通圓寺末寺、伝云、土御門帝、承元三年、石垣金光上人開山。
橋　一、土橋、長　五間半、濶　一間半。
栗原邑、
戸口　凡　七十。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、醫作山上品寺、真言宗、仙台府下、龍寶寺末寺、伝云、用明帝二年、宥日法印開山、観迹聞老志・名跡志共曰、是乃古之栗原寺也、希文　按、東鑑記下後鳥羽帝、文治六年、殺二大河次郎兼任おおかわじろうかねとう於栗原寺一也上。
古塁　一、伝云、栗原隠岐くりはらおき（諱不レ伝）所レ居。
富邑、
戸口　凡　八十一、有下號二黒瀬一地上、此處為二尾松荘一。
神社　凡　二、
白山権現社、不レ詳二何時勧請一。
鹿島・香取神社、相殿祭レ之、伝云、神武帝、五十三年鎮座、香取神社、乃神名帳所レ謂、栗原郡七座之其一也。
寺　一、源昌山常現寺、曹洞宗、本郡一迫下宮野邑、能持寺末寺、伝云、後花園帝、康正二年、善應和尚開山。
古塁　一、伝云、富左馬之丞とみさまのじょう（諱不レ伝）所レ居。
川　一、二ノ迫川、源出レ自二本郡文字邑小野松一、至二姉歯あねは邑一、會二一ノ迫川一。
橋　一、土橋、長　十一間、濶　二間、（下熊川）。
尾松荘梨﨑邑、
戸口　凡　二十二。
神社　一、八幡宮、不レ詳二何時勧請一、名跡志曰、姉歯古松、推為レ三、土人蔵二其一於社中一、以為二後證一、今猶存。
寺　一、神通山用明寺、曹洞宗、本邑三ノ迫澤邊邑、全慶寺末寺、伝云、後土御門帝、文明元年、岳翁和尚開山。
名木　一、姉歯松あねはまつ、或作二姉羽一、歌枕作二姉場一、松葉集作二姉葉一、藻鹽草もしおくさ作(なる)二阿穪葉あねは一、今従二夫木集字一、伝云、用明帝、朝二貢美婦於京師一、本州気仙郡高田邑、所レ貢之女むすめ、不幸路上罹レ病、客二死於此地一、土人憐レ之以葬レ之、塚上植二一松樹一、其妹容色類レ姉、召二之於京師一、上京之時経二此地一、見二亡姉墓一、悲哀涕泣ていきゅう（涙を流して泣くこと）難レ攪、出二懐紙一而屡しばしば拭レ之去、因曰二姉墓松一、後改二姉歯字一、呼二出レ紙地一、曰二紙折坂一、今猶存、古松五六十年前巳枯、其松五葉也、今存者、後人所二継植一之新松也、名跡志曰、一説小野小町おののこまち之姉、没二于茲ここ一、爾後じご（その後、それ以来）小町為二亡姉一建レ寺、曰二松語山龕がん蔵寺一、観迹聞老志曰、古老相伝、是乃筑紫肥前つくしひぜん産、松浦佐用姫まつうらさようひめ之姉墓上松也、新松南一松樹、是邑人塚上松也、有下誤二新松一者上、尤可二辨別べんべつ（違いをわきまえて区別すること）一焉。
石　一、摩腰石、名跡志曰、松下東南十二三歩有二巨石一、石面有二紋理一如レ布、相伝、往昔義経よしつね経過之時、臨レ疲而憩二石上一、伸二旅懐一之地也。
池　一、黄雀池こうじゃくいけ（スズメの池）、名跡志曰、去二姉歯松一四十餘間、東南林中有二小池一、長　四間餘、濶　二間、相伝、義経よしつね東行汲二此池水一、研レ墨作二家書一之地也。
旧跡　一、松語山龕がん蔵寺遺址、或作二松護山岩蔵寺一。
古塁　一、伝云、二階堂治部少輔にかいどうじぶしょうゆう（諱不レ伝）所レ居。
尾松荘姉歯あねは邑、
戸口　凡　八十。
寺　一、大梅山瑞満寺、曹洞宗、本郡三ノ迫岩个﨑いわかざき邑、黄金寺末寺、伝云、後奈良帝、天文五年、善葩(は)和尚開山。
橋　一、姉歯橋、名跡志曰、往二姉歯松一道路有二小橋一、土人今曰二之山王琵琶橋一、去レ松巳五町、按、能因東行親見之人也、考二歌句一、則與二此地一異矣、想夫海畔別有下称二姉歯橋一者上乎。
坂　一、紙折坂、事実詳二于姉歯松條下一。
泉　一、鷹羽泉、伝云、義経よしつね飲レ鷹泉也。
古塁　一、伝云、泰衡やすひら家臣、姉歯平治光景あねはへいじみつかげ古塁也、塁下水田、乃古之東奥道あずまかいどう也。
川　凡　三、
一ノ迫川、二ノ迫川、三ノ迫川、以上三川、至二本邑一、會為レ一。
尾松荘城生野じょうの邑、
戸口　凡　六十。
神社　一、八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
仏宇　一、大仏堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、東光寺照明寺、曹洞宗、越前州、永平寺末寺、伝云、後陽成帝、天正十八年、欣叟芳悦和尚開山。
橋　一、土橋、長　十六間、濶　二間半、（荒瀬）。

封内風土記巻之十八下　　　　　　　　　郡邑編
(栗原郡）
三ノ迫高松荘中野邑、
戸口　凡　六十三、以下至二有壁邑一、凡　二十八邑曰二之三ノ迫一、有下號二上野・瀧澤一地上。
神社　凡　四、
愛宕神社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
新山権現社、同レ上。
運南権現社、同レ上。
寺　一、上品寺、（無二山號一）真言宗、本郡岩个﨑邑、清水寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。
井　一、號二玉井一、在二古塁東八町一。
川　一、三ノ迫川、源出レ自二本郡沼倉邑駒嶽一、至二遠田郡吉住邑一、會二北上川一。
橋　一、土橋、長　五間、濶　二間、（犬橋）。
堰　一、號二岩淵堰一、本邑及猿飛来・大原木・小堤・澤邉・二ノ迫栗原、凡六邑用水。
道　一、往二玉造・磐井両郡一道。
有賀邑、
戸口　凡　百二十六、伝云、此邑、往古本郡吾勝郷福岡邑内也、後冷泉帝、康平五年十月、源頼義みなもとよりよし朝臣父子、誅二伐阿部貞任あべさだとう一、凱旋、同年臘月ろうげつ（陰暦12月の異称）季、発二胆沢郡一、次二軍於此地一迎レ春、里俗有二二十五歳者一、則年甫としはじめ賀レ之、此時義家よしいえ朝臣二十五歳、里民等獻けんレ物もつ（神仏などに奉る品物、献上品）奉賀ほうが（つつしんでお祝いを言うこと）、朝臣感悦、割二邑北之地一、賜二有賀之號一、又有下號二御田鳥みたとり一地上伝云、堀河帝、寛治中、義家よしいえ朝臣誅二代武衡たけひら・家衡いえひら一時、祈二請本郡駒形神一、寄二附此地一以為二祭田一、故称二之御田鳥みたとり保一。
神社　凡　十四、
八幡宮　三、其一、本邑鎮守也、伝云、源頼義みなもとよりよし朝臣父子出陣時、命二清原成隆きよはらしげたか・中原清房なかはらきよしふさ・菅原正弘すがわらまさひろ等一、擔かつぐ二八幡神輿一、祈二寇讐こうしゅう（敵、かたき）退散一、毎二其次軍地一、安二置神輿一處、勧二請之一、以建レ社、此社亦其一也、誅二伐貞任さだとう一時、康平五年十二月、凱旋、次二軍於此地一、翌年正月十七日発二此地一、命二成隆しげたか一勧二請此社一、建二天台宗寺一號二本孝山普養教寺一、為二別当一、故称二之御賀八幡一、（御賀之事、詳二于前條一）寄二附祭田一、称二之宮之下一、今有下號二宮田一数町之地上、乃是也、成隆しげたか第三子清ノ民部少輔きよのみんぶしょうゆう清原季隆きよはらすえたか、崇徳帝、大治二年丁未三月、為二神主一、普養教寺、圓融帝、永和以来荒廃、季隆すえたか十世孫、清ノ伊賀守業隆きよのいがのかみなりたか第二子、伊賀守俊隆いがのかみとしたか者始入二修験道一、號二三僧祇権さんそうぎごん大僧都法印だいそうずほういん一、移二居于普養教寺遺址一、為二別当一以来連綿至レ今、大昌院十七世也、近郷多有二清家之族一云、義家よしいえ朝臣獻たてまつ二弓矢於社頭一、至レ今有下称二弓立・矢立一大樹老杉二本上、後陽成帝、慶長初、為二公用一伐レ之、新栽二両樹以代レ之、今為二古木一、正親町帝、天正中、邑主葛西家臣、渋谷式部しぶやしきぶ（諱不レ伝）再興。
其二、在下號二御田鳥みたとり一地上、伝云、一條帝、寛弘元年、鎮守将軍平貞盛たいらのさだもり嫡子本郡三ノ迫森館城主、諸陵之助正度しょりょうのすけまさのり所二勧請一也。
其三、同レ上、伝云、正親町帝、天正六年、葛西家臣本邑主、尾形新左衛門おがたしんさえもん（諱不レ伝）勧請。
諏訪神社、伝云、大崎家臣、菅原刑部すがわらぎょうぶ（諱不レ伝）所二勧請一。
愛宕神社　二、
其一、在下號二裴城ひじょう一古塁山上上、伝云、順徳帝、建暦二年春、當城主三宮左衛門太夫さんみやさえもんたゆう清原隆隆きよはらたかひさ勧請、隆久たかひさ数世孫讃岐重隆さぬきしげたか、移二于本郡二ノ迫梨﨑城一云。
其二、伝云、天正六年、尾形新左衛門おがたしんさえもん勧請。
天神宮、在二古塁一、伝云、土御門帝、明応二年三月、當城主大崎家臣、菅原右馬助兼長すがわらうますけかねなが勧二請此地一、旧大崎家之領地、正親町帝、元亀之頃、大崎・葛西相争、葛西家武威強大、而遂為二葛西家之有一、同帝、天正季、両家滅亡之後、無二城主一、社亦荒敗、今惟有二老杉一樹一、而僅存二遺址一。
神明宮、不レ詳二何時勧請一、東山帝、元禄中、再二興小社一、以移二於八幡社裏一、今惟存二遺址一。
熊野三神社、在二古塁西方山上一、一社祭二三神一、伝云、建暦二年、三宮左衛門太夫さんのみやさえもんたゆう隆久たかひさ勧請。
牛頭天王社、伝云、後奈良帝、天文中、大崎家臣、高玉茂兵衛たかたましげひょうえ（諱不レ伝）勧請。
新山権現社、不レ詳二何時勧請一。
本山権現社、同レ上。
白山権現社、同レ上。
荒神社、同レ上。
仏宇　凡　三、
薬師堂、不レ詳二何時創建一。
聖徳太子堂　二、共同レ上。
寺　凡　二、
宗武山官庭寺、曹洞宗、磐井郡黒澤邑、西光寺末寺、伝云、正親町帝、天正元年、長室徳壽和尚開山。
三要山正玄寺、伝云、本郡澤邉邑、全慶寺末寺、伝云、後陽成帝、文禄三年、玉山達田和尚開山。
古塁　凡　二、
其一、伝云、後醍醐帝、延喜中、藤原利仁ふじわらとしひと将軍之陣営、而號二裴城ひじょう一、後土御門帝、明応中、大崎家臣、菅原右馬助兼長すがわらうまのすけかねなが居レ之、後奈良帝、天文二年三月、兼長かねなが移二于本邑田子屋城一、同家臣高玉茂兵衛たかたましげひょうえ（諱不レ伝）居レ之、同帝、弘治二年秋、高玉氏移二本郡福岡城一、同家臣田野﨑玄蕃照道たのざきげんばんてるみち居レ之、正親町帝、元亀以来、大崎・葛西相争、年年有レ戦、同帝、天正元年三月四日、大崎兵敗績、田子屋城主、菅原掃部助長国すがわらかもんすけながくに（右馬助、兼長孫）戦死、當城主照道てるみち亦降、三ノ迫之地、悉為二葛西之有一、其家臣渋谷式部しぶやしきぶ（諱不レ伝）居レ之。
其二、在二御田鳥一、號二田子屋城一、天文以来、大崎家臣、菅原右馬助兼長すがわらうますけかねなが居レ之、天正元年、其孫掃部助長国かもんのすけながくに、與二葛西一戦而死レ之、葛西家臣尾形新左衛門おがたしんさえもん居レ之。
赤児邑、
戸口　凡　三十九。
神社　凡　三、
新山権現社、不レ詳二何時勧請一。
熊野神社、同レ上。
伊豆権現社、同レ上。
寺　一、
馬寶山玉泉寺、曹洞宗、本郡三ノ迫黄金寺末寺、伝云、後奈良帝、天文五年、周天栄易和尚開山。
古墳　一、土人称二童児塚ちごがはか一、名跡志・観迹聞老志共曰、相伝、往時秀衡ひでひら好二歌舞一、遷うつす二舞童数十輩一、常舞二歌曲一以為レ楽焉、有二一少年一號二春風一、容貌閑麗かんれい)（みやびやかでうるわしいこと、技亦出群、歌歇つきる二行雲こううん（空を流れ行く雲）一、舞飄ひるがえる二紅袖べにそで一、衆人しゅうじん（多くの人、大勢の人）移二心於此児一、無三顧眄こめん（振り返って見ること）称誉しょうほ（ほめたたえること、称賛）及二他児一、群童妬ねたむレ之、潜ひそかに使二人殺一レ之、以埋二于茲ここ一、其児常好二紅衣一著きるレ之、故後人呼二邑名一、曰二赤児邑一。
古塁　一、伝云、小岩孫三郎こいわまごさぶろう（諱不レ伝）所レ居。
橋　一、土橋、長　八間、濶　二間、（坂下）。
道　一、往二磐井郡一道。
藤渡戸ふじわたと)邑、
戸口　凡　三十二。
神社　凡　二、
蛇王権現社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
古塁　凡　二、伝云、共有壁安芸ありかべあき（諱不レ伝）所レ居。
橋　凡　二、各土橋、其一、長　六間、其二、長　五間、濶　共一間半、（梅木田・高屋敷）。
吾勝郷沼倉郷沼倉邑あがかつごうぬまくらぬら、
戸口　凡　百七十二、有下號二水洞・玉山一地上、奥・羽之域、在二駒形山大日嶽一。
神社　凡　二、
駒形根神社、或曰、御駒おこまの宮、或曰、御駒社、或曰、大日おおひる社、在二奥・羽之界、駒形之嶺、大日嶽一、伝云、景行帝皇子、日本武尊やまとたけるのみこと、東征之時、祭レ之以為二東国鎮寧ちんねい之所一、所レ祭之神天常立あまとこたち尊・国狭立くにさたち尊・（左右）大日孁おおひるめ尊・置瀬おきせの尊・彦火ひこほ尊（左右）・吾勝あかつ尊、中謂二之駒形峯大明神一、或云、駒嶽神社、一・二・三迫・西磐井・羽州雄勝郷、凡　百八十六邑之総鎮守、而延喜式神名帳所レ謂、本郡七座之其一也、在二山上一称二嶽宮一、在二東麓一称二里宮一、山路嵯峨、且秋季新雪埋レ渓、里民難二屡しばしば登一、故造二営里宮於東麓一、常敬けい二拝はい（おがみうやまう）之一、上古有二四大宮司ぐうじ・三十禰宜ねぎ・六十社家しゃけ一、今悉ことごとく闕かける二其家名姓氏一、僅存二鈴杵すずき家一人一、別当修験観常院、乃東麓大宮司だいぐうじ鈴杵宿禰すずきすくね、五十九世之裔孫えいそん也。
林大明神社、不レ詳二何時勧請一、伝云、所レ祭速日はやひ大明神、本邑及近邑之産生神うぶすながき也。
阿彌陀堂、在二長林寺遺址一、名跡志・観迹聞老志共曰、仏軀背後記曰、応永二年所レ建也、蔵二義経よしつね馬具一、今僅存二隻鐙あぶみ一、有二古笈おい一、弁慶所レ負旧物也、中有二金襽袈裟一、傍有二故礎一、往昔多二堂社一、置二八幡・菅神・愛宕・薬師・観音数宇一、其遺址也。
寺　一、福聚山圓年寺、曹洞宗、本郡岩个﨑いわかざき邑、黄金寺末寺、伝云、後奈良帝、天文十八年、二三善葩和尚開山。
山　一、栗駒山、此山、跨二于奥・羽両州一、自レ坎かけ（八掛）而東南至二抻のばす属二本州一、兌乾属二羽州一、峻嶮しゅんけん不レ可レ言、實東奥第一之高嶽也、盛夏宿雪猶在、恰かっこう似二班鳥いかる一、自二東望レ之南首北尾、自レ西レ望レ之北首南尾、有下班鳥駸駸しんしん（馬の速く走るさま）奔二走於雲表うんひょう（雲の上）一之勢上、故號二之駒形山一、或曰、駒形峯、曰二駒形根一者、峯之略訓りゃくくん（万葉集における万葉仮名の用字法の一のこと）也、或駒形岳、或栗駒山、或駒岳、里俗伝称曰二御駒岳・御駒山一、名跡志曰、山上多二朴樹ほうき一、頗すこぶる美材、而屡貢二国用一、跨二磐井郡五串邑一、神名帳所レ載、駒形根神社在二山上一、封内称二駒形一地有二両邑一、以二字其訓相同一、而不レ辨レ之則人多誤レ之、以二神社一而言、則本郡沼倉邑、乃駒形根神社、胆沢郡西根邑、乃駒形神社、以二山岳一而言、則本郡乃称二栗駒山・駒个嶽こまかたけ一矣、歌林所レ称栗駒山是也、古歌多詠二朴樹一、如今山中多二朴樹一、是亦證あかし也、在二胆沢郡一、則曰二駒形一、視者辨レ之、不レ可二妄混一焉。
古寺跡　一、伝云、古昔有レ寺、號二長林寺一、（失二山號一）今荒廃、為二邑民之宅一。
古塁　一、伝云、恵美小次郎高次えみこじろうたかつぐ者所レ居。
義経よしつね墳墓、名跡志・観迹聞老志共曰、義経よしつね自着盡後、沼倉小次郎高次ぬまくらこじろうたかつぐ者、葬二之此地一、以築二墳墓此地一、有二高次たかつぐ古舘地一、上頭高山かみずっこうやま称二弁慶べんけい峯一、往昔武蔵坊経歴之地也。
雌雄瀑布、雄瀑布號二行者瀑布一、直下十六丈五尺許、横ニ丈許、雌瀑布二間戸瀑布一、直下十丈許、横一丈五尺許、土人称二之雌雄一。 道　一、往二羽州仙北一道。
川　一、三ノ迫川。
橋　一、土橋、長　十五間、濶　二間、（三段田）。
堰　一、號二馬場堰一、松倉・岩个崎・里谷・島澤四邑用水。
澤邉邑、
戸口　凡　百八十三、有二市店一而駅也、有下號二上林・青天寺前門一地上。
神社　凡　五、
三社宮、愛宕・稲荷・天神、相殿祭レ之、伝云、後光明帝、慶安三年所二勧請一也。
八幡宮、伝云、正親町帝、天正中所二勧請一也。
熊野神社、伝云、後陽成帝、慶長中勧請。
神明宮、不レ詳二何時勧請一。
秋葉社、同レ上。
仏宇　一、観音堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、隋洞山全慶寺、曹洞宗、仙台府下宮澤、宗禅寺末寺、伝云、後土御門帝、文明六年、宗禅寺第三世、通屋和尚開山。
孝子　一人、邑民四郎作夫與惣右衛門しろうさくふよそううえもん、事二老年父母一、奉養盡つくすレ心、頗すこぶる致二孝道一、中御門帝、享保十三年十二月、與惣衛門よそうえもん生涯、毎歳賜二廩米十俵一賞レ之。
古塁　一、在二川前一、伝云、澤邉肥前さわべひぜん（諱不レ伝）所レ居。
道　一、往二南部・松前一道。
堰　一、號二板倉堰一、福岡・若柳・石越三邑用水。
川　一、三ノ迫川。
橋　一、土橋、長　二十一間、濶　三間半、（駅頭）。
大原木邑、
戸口　凡　七十七。
神社　凡　三、
牛頭天王社、伝云、後三條帝、延久三年之頃、八幡太郎義家はちまんたろうよしいえ朝臣所二勧請一也、古昔有レ寺、號二亀井山毛悦寺一、今荒廃、惟存二其名一。
熊野権現社、不レ詳二何時勧請一。
天神宮、同レ上。
仏宇　一、大日堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、尼我山喜泉院、曹洞宗、本郡岩个崎邑、黄金寺末寺、伝云、後奈良帝、享保元年、周天栄易和尚開山。
古塁　一、伝云、鈴木参河すずきみかわ（諱不レ伝）所レ居、観迹聞老志曰、重家館在二小堤邑一、有二尼我山喜泉院一、是乃鈴木三郎すずきさぶろう所レ據古墟ふるつか也。
川　一、三ノ迫川。
橋　一、土橋、長　七間、濶　二間、（道場）。
福岡邑、
戸口　凡　五十五。
神社　一、山王権現社、不レ詳二何時勧請一。
仏宇　一、弁財天堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、清水山廣禅寺、曹洞宗、本郡下宮野邑、能持寺末寺、伝云、後陽成帝、元和五年、松山壽鸞和尚開山。
川　一、三ノ迫川。
蒜香郷岩个﨑邑、
戸口　凡　百五十八、有二市店一而駅也、有下號二石崎・岩倉・成田一地上、毎歳自二七月朔日一、至二八月二十日一、凡　五十日、州内馬集二此地一、名之曰二日市一、古来之旧例也、公族中村源三郎義景なかむらげんざぶろうよしかげ采邑。
神社　凡　十、
三島神社、不レ詳二何時勧請一。
羽黒権現社、同レ上。
神明宮、同レ上。
八幡宮、同レ上。
牛頭天王社、同レ上。
熊野神社、在二黄金寺中一、同レ上。
愛宕神社、同レ上。
白山権現社、在二清水寺中一、同レ上。
駒形神社、同レ上。
竹駒神社、伝云、古内主膳重定ふるうちしゅぜんしげさだ勧請、不レ詳二其年月一。
仏宇　一、観音堂、在二清水寺中一、伝云、平城帝、大同中、坂上田村麻呂さかうえたむらまろ草創、七處観音之其一也。
寺　凡　六、
熊野山黄金寺、曹洞宗、越後州村上、耕雲寺末寺、伝云、後花園帝、嘉吉元年辛酉、学室中積和尚開山、有二伊達摂津宗綱だてせっつむねつな・伊達筑前宗信だてちくぜんむねのぶ、及母堂霊牌一、邦君寄二附八石九斗之地一。
音羽山延命院清水寺、真言宗、京師智積院末寺、伝云、往古號二圓通院一、不レ知二何時何人開山一、邦君寄二附八石九斗之地一、名跡志・観迹聞老志共曰、相伝、田村麻呂たむらまろ所レ建、一説悪七兵衛師末あくななひょうえもろまつ者之子、彌兵衛師門やひょうえもろかだ、擬ぎ（まねて）二京師大悲閣一建レ之、一説作二彌平兵衛師門やへいひょうえもろかだ一。
攝取せっしゅ山圓鏡寺、浄土宗、仙台府下八塚、城覚寺末寺、伝云、古昔號二大智山圓覚寺一、良皓上人開山、不レ詳二其年月一、初関東大澤邑、圓通寺也、伊達摂津宗綱だてせっつむねつな、為二本邑主一時、貞山君移二寺於別處一、以二良忍残世上人一、為二中興開山一、造二営堂宇一、命改レ號、寄二附九石餘之地一、此時為二城覚寺末寺一。
浄法院、（無二山號一）浄土宗、本邑圓鏡寺末寺、伝云、良山上人開山、不レ詳二其年月一。
月峯山洞松院、曹洞宗、本邑黄金寺末寺、伝云、後奈良帝、天文十年、二三善葩和尚開山。
旗本山舘山寺、曹洞宗、仙台府下、宗禅寺末寺、伝云、正親町帝、元亀中、岳林玄貞和尚開山。
古塁　凡　四、
其一、號二鶴丸一、伝云、富澤日向直景とみざわひゅうがなおけい所レ居、而高祖道祐みちすけ・曾祖明岩みょうがん・祖父直家なおいえ・父直綱なおつな五世・相継住二于此一、其後後水尾帝、元和中、貞山君第五男、伊達摂津宗綱だてせっつむねつな居レ之、宗綱むねつな没後、至二寛永四年一、宗綱弟伊達筑前宗信だてちくぜんむねのぶ居レ之、宗信むねのぶ没後、石母田大膳宗頼いしもただいぜんむねより居レ之、然其地漸崩、狭窄きょうさく（間がすぼまって狭いこと） 而不レ可レ居、故宗頼そうより別ト二地於塁下一居レ之、今中村家所レ居是也。
其二、號二東館一、伝云、元和中、宗綱むねつな在二鶴丸一時、茂庭石見綱元もにわいわみつなもと居レ之。
其三、號二黒岩館一、伝云、木村伊勢守吉清きむらいせのかみよしきよ家臣所レ居、名跡志曰、是乃東鑑あずまかがみ所レ謂、黒岩口くろいわくち是也、土人曰二之黒岩館一、中古富澤日向とみざわひゅうが居レ之、去二鶴丸西一三町餘。
其四、號二田中館一、伝云、富澤日向とみざわひゅうが家隷、田中但馬たなかたじま（諱不レ伝）所レ居。
瀑布　一、在二清水寺中一、曰二音羽瀑布一、小瀑布也。
古木　一、音羽松、在二清水寺中一、生二石上一、故或曰二之石割松一。
橋　凡　五、各土橋、
其一、長　七間、濶　二間、（茂庭町）。
其二、長　八間、濶　二間、（同上）。
其三、長　七間、濶　二間、（三島）。
其四、長　六間、濶　二間、（森前）。
其五、長　七間、濶　二間、（出田）。
堰　凡　二、
軽部堰、本邑及平形・小迫・大原木・澤邉・金成・大林・有賀・武鎗九邑用水。
成田堰、本邑、及里谷両邑用水。
道　一、往二玉造・磐井両郡一道。
鳥澤邑、
戸口　凡　百十。
仏宇　一、不動堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、高月山養昌寺、曹洞宗、本郡岩个﨑邑、黄金寺末寺、伝云、後陽成帝、慶長十年、金南榮門和尚開山。
道　一、往二玉造・磐井両郡一道。
古塁　一、伝云、桶渡典膳おけわたりてんぜん（諱不レ伝）所レ居。
橋　一、土橋、長　十五間、濶　二間、（諏訪）。
深谷邑、
戸口　凡　四十。
神社　一、八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
寺　一、熊野山長徳寺、曹洞宗、本郡岩个﨑邑、黄金寺末寺、伝云、後奈良帝、天文七年、周天舜易和尚開山。
古塁　一、伝云、深谷能登ふかやのと（諱不レ伝）所レ居。
里谷邑、
戸口　凡　四十。
神社　一、熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
寺　一、霞澤かすみさわ山昌林寺、曹洞宗、本郡岩个﨑邑、黄金寺末寺、伝云、後奈良帝、天文十六年、二三善葩和尚開山。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。
橋　凡　二、各土橋、
其一、連架(つなぎ橋、長　十九間、濶　二間、名跡志曰、在二津久毛橋つくもはし西一、往昔河流廣濶、橋梁不レ足レ架、東西相継為レ橋、故曰二連架橋一、今水涸流細、土人誤曰二之杉橋一。
其二、土橋長　八間、濶　一間半、（二枚橋）。
猿飛来邑、
戸口　凡　百九。
神社　一、大天馬社、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　凡　二、
地蔵堂、在二青雲寺中一、伝云、源頼義みなもとよりよし朝臣・義家よしいえ朝臣、征二伐安倍貞任あべさだとう一、凱旋之時、命二御館権太郎清衡おんたてごんたろうきよひら一、後冷泉帝、康平五年十一月、所二創建一也、當二此時一、自二駒嶽一猿乗レ雲飛来、故名邑曰二猿飛来一。
観音堂、在二長楽寺遺址一、不レ詳二何時創建一、有二鐘楼遺址一。
寺　一、雲南山地蔵院青雲寺、真言宗、本郡岩个崎邑、清水寺末寺、伝云、後冷泉帝、康平五年、智高阿闍梨あじゃり開山。
古寺跡　一、伝云、古昔有レ寺、號二八龍山長楽寺一、有二衆徒二十四坊一、悉荒廃、為二邑民之宅一、僅存二衆徒之名一者八曰、法印坊・十町坊・大学坊・彌陀坊・八郎坊・岩津坊・今入坊・佃坊。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。
川　一、三ノ迫川。
大林邑、
戸口　凡　百八十四、有二市店一而駅也。
神社　凡　五、
熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
雲南権現社、同レ上。
道祖神社、同レ上。
愛宕神社、同レ上。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、熊野山大林寺、曹洞宗、本郡下宮野邑、能持寺末寺、伝云、春翁和尚開山、不レ詳二其年月一。
川　一、三ノ迫川。
平形邑、
戸口　凡　三十二、高屋喜庵英顯たかやきあんひであき采邑。
神社　凡　四、
八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
山王権現社、同レ上。
愛宕神社、同レ上。
雲南権現社、同レ上。
寺　凡　二、
極楽山観喜寺、曹洞宗、本郡高清水邑、福現寺末寺、伝云、後水尾帝、元和三年、福源寺第六世、大室和尚開山。
江浦藻山信楽寺、真言宗、本郡岩个崎邑、清水寺末寺、不レ詳細二何時何人開山一、伝云、泰衡やすひら陣営之地也、有二古碑一、高　三尺六寸、廣中五寸許、厚九寸許、記云、正應六年二月二十日、左書二石刀現宿一、右書二帰真実密方一、希文　按、正應之號、伏見帝御宇、六年永仁元年也。
橋　一、江浦藻つくも橋、頼朝よりとも卿、征二代泰衡やすひら一之時、梶原景高かじわらかげたか所レ詠和歌、膾かい二炙しゃ（広く言われていること、広く知れわたっていること）人口一、観迹聞老志曰、金成駅五町餘、大悲閣下有二水流一、三迫河流、架二一土橋一、津久毛橋是也、橋西平形邑、以東岩崎邑、跨二南北一、上有二古館址一、立レ石刻レ銘、記曰、泰衡やすひら之墓、高　四尺五寸、石面上有二梵字一、下書二承保六年二月二十日一、左方記曰、密方敬白、橋畔是文治古戦場也、城湟殊深しろほりことのほかふか、士卒憂レ之、投二江浦藻つくも一、蹈あしぶみ而攻レ城、城遂陥、仍なお名二江浦藻橋一、按、承保六年、白河帝、承暦三年己未也、考レ之、承保四年改二元承霊一、無二六年一、蓋東奥邊陲道路巳隔、未レ解二改元一、推記二其年数一者也、先二文治五年一、巳百一年、非二泰衡やすひら之墓一、也明矣、蓋康平中、戦死者之墓乎、然考二国史一、貞任さだとう、乃後冷泉帝、康平五年壬寅伏ふくレ誅ちゅう（罪人などが処罰にしたがうこと）、先二承暦三年一、巳十有八年、後人立レ石而吊レ之乎、以レ有二津久毛橋之役一、土俗不レ考二時世一、妄附會、而為二泰衡やすひら之墓一者乎、且江浦藻つくも、乃海濱之物、豈生二於此地一哉、盖けだし岩畔野草莽莽離離もうもうりり（草深く、草木が生い茂っているさま）、以三相二似江浦藻つくも一、而仮二其名一乎、希文　按、名跡志所レ記、與二邑人所一レ言異、而以二正應一為二承保一、蓋以二訓音相似一而誤レ之乎、玉造郡郡上野目邑、亦有レ號二津久毛橋一、未レ知孰是一。
泉　一、號二江浦藻つくも泉一、土人伝云、此泉旧無レ名、巡見使じゅんけんし経歴之時、以レ在二江浦藻つくも橋邊一命二其名一。
川　一、三ノ迫川。
十三堰、名跡志曰、連架つなぎ橋北二十四五間、有二古塁一、上有二土壇十三堆一、自レ北至二南相連一、或曰、此地古戦場、而戦死者之塋はか也。
古塁　一、不レ詳二何人所一レ居。
岩崎邑、
戸口　凡　三十八。
神社　凡　二、
熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
紫明神社、同レ上。
仏宇　一、
虚空蔵堂、不レ詳二何時創建一。
古塁　凡　二、
其一、號二岩崎館一、不レ詳二何人所一レ居。
其二、號二長橋館一、同レ上。
堰　一、名跡志曰、信楽寺北有二一古壇一、泰衡やすひら営陣之時、士卒守レ夜之處、土人呼レ之曰レ鼠者、誤也、守夜ねず之壇、而所レ謂不レ寝之義也。
小堤邑、
戸口　凡　二十九、有下號二念仏壇・向原一地上。
神社　一、山王権現社、伝云、三條帝、延久三年比、所二勧請一也。
仏宇　一、地蔵堂、不レ詳二何時創建一。
旧跡　一、野山中有下號二陣場一地上、不レ詳二何時何人所一レ陣也。
川　一、三ノ迫川。
金田荘糠塚武鎗邑かねだしょうぬかつかむらりむら、
戸口　凡　二百五十八、有二市店一而駅也、有下號二大袋一地上。
神社　凡　十、
白山権現社、伝云、文武帝、大賓三年鎮座、古昔有レ寺、號二白玉山明覚寺一、今荒廃、惟存二其名一。
石尊権現社、伝云、後花園帝、寶徳元年勧請。
愛宕神社、伝云、後水尾帝、元和六年勧請。
八幡宮、伝云、後圓融帝、永徳二年勧請。
新山権現社、伝云、後光厳帝、文和四年勧請。
月山権現社、伝云、後柏原帝、文亀元年勧請。
熊野神社、伝云、鳥羽帝、永久五年鎮座。
天神宮、伝云、後土御門帝、延徳二年勧請。
照井権現社、伝云、後醍醐帝、元亀二年勧請、此地、古昔有二萬日堂一、而號二紫雲山一。
山神社、不レ何時勧請一。
仏宇　一、薬師堂、伝云、後醍醐帝、延長八年創建、號二醫王山一。
寺　一、福壽山安養寺、曹洞宗、本郡澤邉邑、全慶寺末寺、伝云、後奈良帝、天文六年、慶室和尚開山。
老壽　一人、邑民勘兵衛かんべい祖母、明和三年、以二百歳一、賜二養老米一、同年三月没。
古塁　凡　二、
其一、伝云、古昔天暦入道てんれきにゅうどう者所レ居也、天暦入道てんれきにゅうどう姓名共不レ伝、不レ詳二何人一。
其二、伝云、山崎玄蕃やまさきげんばん（諱不レ伝）所レ居。
壇　一、號二鹿壇一、伝云、後奈良帝、天文十年、佐藤越後さとうえちご（諱不レ伝）所レ居、獲え二白鹿一而瘞うずめるレ之築レ壇。
橋　凡　四、各土橋、
其一、長　十間、濶　二間半、（仮屋南方）。
其二、長　六間、濶　二間、（仮屋北方）。
其三、長　七間、濶　二間半、（大土手）。
其四、長　五間、濶　二間、（中土手）。
道　凡　二、
其一、往二磐井郡一道。
其二、往二磐井・気仙両郡一道。
金田荘畠邑、
戸口　凡　三十四、有下號二大梨・富田・堂處・葉木澤一地上。
神社　凡　五、
天神宮、伝云、金賣橘治かねうりきちじ所二勧請一、本邑鎮守也、社地曰二北山一、有二老杉一、周圍二丈餘、古昔別当在二山下一、其處曰二禰宜宅一、今為レ圃。
愛宕神社、伝云、是亦橘治所二勧請一也。
雲南権現社、不レ詳二何時勧請一。
寶量権現社、同レ上。
熊野神社、同レ上。
寺　一、福應山常福寺、曹洞宗、磐井郡流蝦島ながれえびじま邑、満昌寺、伝云、此寺旧天台宗、而六條帝、仁安中、金賣橘治かねうりきつじ・橘六きつろく・橘内きつない兄弟、為二其父母一、建下寺於今號二寺澤一地上、不レ詳二開山僧名一、其後本邑主畠対馬はたつしま（諱不レ伝）移下之於號二大梨澤一地上、而為二牌寺一、罹二回禄一、荒廃、惟存二其寺號一、是以邑民相謀、建下寺於號二古館一地上、以二満昌寺第四世、洞岩全龍和尚一、為二中興開祖一、不レ詳二其年月一。
旧跡　凡　六、
金山澤、伝云、金賣橘治かねうりきちじ之父、藤太焼レ炭、橘治きちじ鑿のみ二出黄金一之地。
笹之蔵、伝云、橘治きちじ建二金蔵一之地、至レ今鑿のみ二其地一、則偶得二古瓦一。
鈴坂、鶏坂、伝云、橘治きちじ以二黄金一造二雙鶏そうけい両鈴一、埋二之於金山澤之東西一、祭二山神一。
古堂遺址、伝云、橘治きちじ所レ造二建釈迦堂一之遺址、本尊赤□檀木像、毘首羯摩びしゅかっま所レ造、京師嵯峨之釈迦同作之霊仏、而其堂至二後水尾帝、寛永之頃一、猶存、漸就二荒廃一、且常福寺亦無住、故移二本尊於本郡金成邑福王寺一、霊元帝、貞享中、依二邦君之命一、安二置仙台府下龍寶寺一。
五輪塔　凡　二、
金賣橘治かねうりきちじ之父、藤太夫婦之墓也、文字漫滅不二分明一。
泉　凡　二、
其一、號二一盃泉一、其所レ湧少、而汲レ之不レ蓋満溢まんいつ（いっぱいになってあふれること）、故云レ爾、伝云、源義経みなもとよしつね平泉下向時、諸軍飲レ之不レ蓋。
其二、號二不生梨ならぬなし之泉一、不レ詳三其所二以然一。
川　一、古昔京師縉神しんしん（高い官位を有する人物）家姫子やひめこ、蒙こうむる二清水観音之霊夢れいむ一、而至二此地一、為二藤太之妻一、生二橘治きちじ兄弟三人一、其初来時渡二此川一、濡うるおう二其襜せん（前垂れ）一故名レ之。
古塁　一、伝云、畠対馬はたつしま（諱不レ伝）所レ居。
沼　一、號二錢沼ぜにぬま一、伝云、源義経みなもとよしつね追二討平家一之時、橘治獻たてまつ二軍用之金銭一、服つけレ馬運二送之一、其馬倒溺二此沼一、故名レ之、今水涸而為二小潦こにわたずみ（小さな雨水）一也。
道　一、往二磐井郡一道。
金田荘金成邑、
戸口　凡　二百三十六、有二市店一而駅也、有下號二翁澤一地上。
神社　凡　十一、
八幡宮、伝云、後冷泉帝、康平五年、源頼義みなもとよりよし朝臣所二勧請一也。
鬼渡大権現社、伝云、平城帝、大同中、坂上田村麻呂さかうえたむらまろ所二勧請一也、不レ詳二何神一。
熊野神社　三、高倉帝、承安四年、金賣橘治信高かねうりきちじのぶたか所二勧請一也。
牛頭天王社、同レ上。
天神宮、伝云、正親町帝、天正八年、旧邑主金成内膳かなりないぜん（諱不レ伝）勧請。
雲南権現社、同レ上。
山王権現社、伝云、所レ祭大巳貴命おおなむむちみこと、聖武帝、天平十八年鎮座遷宮、上古有二社職一、元祖曰二五位下大外記清原業隆だいげききよはらありたか一、其後為レ僧、正親町帝、天正中、中興開山、自性院蓮照法印為二修験一。
神明宮、不レ詳二何時勧請一。
愛宕神社、在二福王寺中一、同レ上。
仏宇　凡　二、
薬師堂、在二龍国寺中一、本尊慈覚大師作、不レ詳二何時創建一。
観音堂、同レ上。
寺　凡　二、
薬王堂龍国寺、曹洞宗、磐井郡下黒澤邑、西光寺末寺、伝云、後陽成帝、文禄三年、長室徳壽和尚開山。
金成山清教院福王寺、真言宗、仙台府下、龍寶寺末寺、不レ詳二何時何人開山一、有二聖徳太子所レ造不動像一、且自二畠邑一所二移置一之毘首羯摩びしゅかつま所レ造、釈迦像依二邦君之命一、共安二置於龍寶寺一、是以寄二附十石之地一。
倉廩　一、儲蓄雑穀。
孝子　二人、邑民総太郎そうたろう継父利助りすけ、事二総太郎そうたろう祖母一、深切しんせつ（親切）竭つくすレ力、且與二家人一相和、教レ育総太郎そうたろう一、使下之励二稼穡かしょく（物の植えつけと取り入れ）一與二郷民一相和上、総太郎そうたろう亦事二利助りすけ一如二所生しょせい（ 生み出したところ、 父母・家筋・出生地）一、家衆雍睦（家庭）、不レ怠二農業一、櫻町帝、元文五年九月、各賜レ金賞レ之。
古塁　凡　三、號二東館・西館・南館一、伝云、金賣橘治かねうりきちじ兄弟三人所レ居、其後旧邑主金成内膳かなりないぜん（諱不レ伝）居二南館一。
泉　一、號二髪長泉一、伝云、古昔翁之仮面、浮二出水上一、呼二其地一曰二翁澤一、今其仮面蔵二於隣邑小迫邑勝大寺一。
旧跡　一、有下號二金沼一地上、伝云、古昔有レ沼、隣邑畠邑、炭焼藤太欲レ買レ米、而赴二姉歯之市店一、過二此沼邊一、見二沼中鳬雁かもかり多群一、欲レ撃レ之、以二所レ包砂金一為レ礫つぶて、投二此水中一、呼レ之曰二金沼一、今悉為二野田一。
橋　凡　四、各土橋、
其一・二、各長　十二間、濶　二間、（下大橋・押散）。
其三・四、各長　六間、濶　一間半、（荒崎・新橋）。
道　一、自二仙台一往二南部一道。
高倉荘石越邑、
戸口　凡　五百七十九、有下號二南江・北江・東江一地上、公族葦名刑部盛倫あしなぎょうぶもりみち采邑。
神社　凡　六、
建部大明神・神明宮・白鬚しらひげ神社、以上三神、一宮相殿祭レ之、本邑鎮守也、不詳二何時勧請一。
愛宕神社、不レ詳二何時勧請一。
鹿島神社、同レ上。
牛頭天王社、・山王権現社、以上二神、一社相殿祭レ之、同レ上。
天神宮、同レ上。
蔵王権現社、同レ上。
仏宇　凡　二、
観音堂、伝云、源義家みなもとよしいえ朝臣所二創建一。
不動堂、伝云、伝教大師所二草創一。
寺　一、石越山昌学寺、曹洞宗、磐井郡流西永井邑、瑞昌寺末寺、伝云、正親町帝、天正六年、吉山正音和尚開山。
悌子ていこ　一人、邑民喜平治きへいじ、事レ兄、友愛最篤、中御門帝、享保十三年五月、賜レ賞レ之。
古塁　一、伝云、千葉越前ちばえちぜん（諱不レ伝）所レ居。
沼　一、號二加沼一、接二磐井郡流西永井邑一。
川　一、三迫川。
橋　凡　四、各土橋、
其一、長　十五間、濶　二間餘、（東郷）。
其二、長　十二間、濶　二間餘、（同レ上）。
其三、長　十一間、濶　二間餘、（北郷・夏川）。
其四、長　八間、濶　一間半、（長島屋）。
道　凡　三、
其一、往二登米郡一道。
其二・三、共往二磐井郡一道。
普賢堂邑、
戸口　凡　四十九。
神社　一、熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
仏宇　一、普賢堂、名跡志・観迹聞老志共曰、後花園帝、永享中、平低重たいらのちかしげ所レ建、寺號二白象山洞雲寺一、傍有二熊野社一、有二鰐口一、記曰、永寧十二年四月ニ十二日、平低重たいらのちかしげ納レ之。
寺　一、白象山洞雲寺、曹洞宗、本郡岩个﨑邑、黄金寺末寺、伝云、後陽成帝、慶長五年、金南榮門和尚開山。
古塁　一、伝云、小野寺彌四郎おのでらやしろう（諱不レ伝）所レ居。
橋　凡　二、各土橋、共長　六間、濶　二間、（高田・荒田）。
道　一、往二磐井郡及羽州仙北一道。
若柳邑、
戸口　凡　五百七、有二市店一而駅也。有下號二新山一地上。
神社　凡　九、
神明宮、不レ詳二何時勧請一。
愛宕神社　二、共同レ上。
八幡宮　二、共同レ上、其一、在二新井山一、伝云、義家よしいえ朝臣軍場也。
天満宮、同レ上。
白山神社、同レ上。
平野神社、名跡志曰、仁徳帝御宇所レ建也、不レ伝二其事実一、爾後葛西清重かさいきよしげ再二興之一。
秋葉神社、伝云、後西帝、明暦中勧請。
鳳凰山柳徳寺、曹洞宗、本郡澤邉邑、全慶寺末寺、伝云、後柏原帝、大永三年、快叟龍意和尚開山。
倉廩　一、租米儲蓄雑穀。
孝子　一人、邑民又市またいち父又作またさく、嘗事二老父又右衛門またうえもん一、至孝、又作またさく没後、聞二達公府一、是以東山帝、寶永二年十一月、賜下其所二嘗受一之田二十石餘之地於又市またいち上、挙為二郡司部下番外士一。
泉　一、號二青木泉一、不レ詳三其所二以然一。
旧跡　一、有下號二馬籠一地上、伝云、義家よしいえ朝臣陣営繋レ馬處也。
古塁　一、名跡志曰・観迹聞老志共曰、新にひ山古館在二駅口一、古老伝云、大古此山一夕起出、故曰二新山一、山麓有二河流一、架レ橋、而通二于福岡一、今異二往時一、相伝、此山頭亦義家よしいえ朝臣次軍之地也、其後属二葛西一、葛西二男寺崎式部太輔てらさきしきぶたいゆうう、使下家臣千葉豊後ちばぶんご、自二岩井北館一移レ之而守上レ之、豊後ぶんご後裔、今落二民間一、在二本邑一、能勤二農事一、貢二賦税一、恵二親族一、且廉直れんちょく（潔白で正直なこと）而有二陰徳いんとく（人に知られないようにひそかにする善行）一、是以郷党称二之善人一。
川　一、三ノ迫川。
堰　一、號二落江堰一、登米佐沼・遠田西野・中津山三邑用水。
橋　凡　七、各土橋、
其一、長　十一間、濶　二間半、（新倉場橋）。
其二、長　九間、濶　三間、（境橋）。
其三・四、各長　七間、濶　二間餘、（満加比橋・新田橋）。
其五、長　六間、濶　三間、（橋本）。
其六、長　五間半、濶　二間餘、（中目）。
其七、長　五間、濶　一間半、（右衛門橋）。
道　一、往二磐井郡一道。
末野邑、
戸口　凡　五十四。
神社　凡　四、
八幡宮　二、共不レ詳二何時勧請一。
牛頭天王社、同レ上。
御嶽権現社、同レ上。
古塁　一、伝云、築館四郎左衛門つきだてしろうさえもん（諱不レ伝）所レ居。
橋　一、土橋、長　十三間、濶　二間半。
道　一、南部往還道。
金田荘蒜香ひるかおり郷小迫邑、
戸口　凡　五十四。
神社　凡　十、
白山権現社、不レ詳二何時勧請一、古社也、毎歳三月三日、勝大寺衆徒行二祭事一。
雲南権現社、不レ詳二何時勧請一。
牛頭天王社、同レ上。
八幡宮　二、共同レ上。
愛宕神社、同レ上。
道祖神社、同レ上。
山神社、同レ上。
白狐社、同レ上。
明神社、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　凡　四、
観音堂、伝云、平城帝、大同中、坂上田村麻呂さかうえたむらまろ所二創建一、而奥州七處之其一也、有二縁起一、妄説不レ足レ信焉、七處乃篦岳・牧山・水越長谷・鱒淵華足・南部三閉・富山・本邑、皆田村麻呂たむらまろ所レ建也、名跡志・観迹聞老志共曰、後小松帝、應永二年八月十日、土佐守継長とさのかみつぎなが者、有二上梁文一、伝蔵二于勝大寺寶庫一、曰、五十一代平城帝、大同中、田村麻呂たむらまろ所レ建。
地蔵堂　三、共不レ詳二何時創建一。
寺　一、楽峯山菩提院勝大寺、真言宗、武州彌勒寺末寺、伝云、清君法印開山、不レ詳二其年月一、至二當住一、六十七世也、往古衆徒有二二十六坊一、至二後冷泉帝、永承中一亦然、今存者十四坊、正圓坊・眞鏡坊・圓林坊・仲大坊・光知坊・成實坊・光實坊・圓眞坊・實乗坊・論教坊以上十坊至二永承之比一、清僧、今皆妻帯也、教實坊・墝眞坊・乗月坊・法橋以上四坊、古来妻帯也、今其名存坊亡者、十有二、圓密坊・顯智坊・舜明坊・密道坊・明識坊・禅光坊・圓観坊以上七坊、清僧也、舜圓坊・理勝坊・日輪坊・南瀧坊・光意坊以上五坊、古来妻帯さいたい（妻を持つこと、妻がいること）也。
旧跡　凡　七、
仁王門遺址、在二白山社地一、後冷泉帝、永承三年八月創二建之一、上梁古牒寫、今猶存、而蔵二于勝大寺一、其後、後柏原帝、永正中再造、今荒廃、而惟存二遺址一、仁王像朽敗、在二勝大寺一。
鈴鹿森、在二白山社地一、伝云、擬二勢州鈴鹿山一。
豊原、在二白山社地一、伝云、古昔有二神明宮一、今荒廃。
花田池、在二白山社地西澤一、今水涸、僅有二其痕一、称二花田澤一、不レ詳三其所二以然一。 龍蔵池、在二白山社南一、不レ詳三其所二以然一。
五色池、池中有二五区一、同レ上。
閼伽(あか)池、伝云、古昔勝大寺汲二閼伽あか水一。
古塁　凡　二、
其一、伝云、飯倉日向いいくらひゅうが（諱不レ伝）所レ居。
其二、伝云、金成内膳かなりないぜん（諱不レ伝）所レ居。
橋　一、土橋、長　六間、濶　二間、（中之橋）。
道　一、南部往還道。
吾勝郷松倉邑、
戸口　凡　百三十五。
神社　一、八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
仏宇　凡　二、
不動堂、不レ詳二何時創建一。
薬師堂、同レ上。
寺　一、南中山長照寺、曹洞宗、本郡岩个﨑邑、黄金寺末寺、伝云、正親町帝、天正十二年、龍国壽全和尚開山。
古塁　一、伝云、小野寺道海おのでらみちうみ（俗称・諱共不レ伝）所レ居。
川　一、三ノ迫川。
橋　凡　二、各土橋、
其一、長　七間、濶　二間、（阿加土）。
其二、長　六間、濶　二間、（金町）。
道　一、往二羽州仙北一道。
金田荘片馬邑、
戸口　凡　六十七、田村下総守村隆たむらしもうさのかみむらたか主采地。
神社　凡　二、
牛頭天王社、伝云、後醍醐帝、延喜中、鎮守府将軍藤原利仁ふじわらとしひと所二勧請一、而本邑鎮守也。
荒神社、伝云、後小松帝、應永中、後藤美作ごとうみまさか（諱不レ伝）者所二勧請一也。
旧社跡　凡　四、
月山社遺址、伝云、後柏原帝、大永中、本邑旧主菅原薩摩長隆すがわらさつまながたか所二勧請一、今荒廃、存二遺址一耳。
羽黒権現社遺址、不レ詳二何時勧請一、今荒廃、惟存二遺址一。
白山権現社遺址、同レ上。
雲南権現社、同レ上。
古塁　凡　三、
其一、號二日光館一、伝云、大永中、菅原薩摩長隆すがわらさつまながたか居レ之、其後伊藤隼人いとうはやと（諱不レ伝）所レ居。
其二、號二手抦館てへいかん一、伝云、正親町帝、元亀中、菅原大膳隆長すがわらだいぜんたかなが、其子主税長治ちからながはる所レ居。
其三、號二上吉目木館一、伝云、菅原大膳すがわらだいぜん支城也。
道　一、往二磐井郡一道。
金田荘有壁邑、
戸口　凡　八十七、有二市店一而駅也、田村下総守村隆下総たむらしもうさのかみむらたか主あるじ采地。
神社　凡　十一、
香取神社、伝云、平城帝、大同中、田村麻呂所二勧請一也。
神明宮、伝云、後陽成帝、慶長中、邑民等勧請。
雲南権現社、・五條天神社・大田明神社、以上三社、伝云、後小松帝、應永中、旧邑主後藤美作ごとうみまさか（諱不レ伝）所二勧請一也。
祇園神社・北野神社、以上両社、伝云、後冷泉帝、康平中、頼義よりよし朝臣所二勧請一也。
貴船神社、伝云、孝謙帝、天平寶字八年、藤原朝臣朝獦ふじわらあそんあさかつ所二勧請一也、而日本三社之中第二社也。
熊野神社、伝云、後鳥羽帝、文治中、照井太郎高直てるいたろうたかなお所二勧請一也。
寶量権現社、伝云、本郡畠邑旧主畠対馬はたつしま（諱不レ伝）弟畠左藤治信頼はたさとうじのぶより、天正之末、落魄らくはく（おちぶれること、零落）到二本邑一時、所レ移之社也。
道祖神社、伝云、観音寺開山洞室和尚所二勧請一也。
仏宇　凡　二、
観音堂、伝云、往古此處曰二伊香保山一、平城帝、大同中、田村麻呂所二創建一、而奥州三十三番巡禮、第二十一番之札處也。
大日堂、伝云、清和帝、貞観中、慈覚大師所二創建一也。
寺　一、有壁山観音寺、曹洞宗、和州十日市郡味間邑、補岩寺末寺、伝云、此寺旧伝教大師開山、天台宗、而號二有壁山圓通院一、後圓融帝、永和中荒廃、後奈良帝、弘治三年、本邑旧主菅原帯刀長尚すがわらたてわきながなお)再二興之一、改二號観音寺一、以二洞室和尚一為二中興開祖一、改二宗曹洞一。
旧跡　凡　二、
達摩だるま石、其形似二達摩だるま一、古昔有レ堂、今荒廃。
照井夫婦てるいめおと五輪塔、伝云、泰衡やすひら家臣、照井太郎高直てるいたろうたかなお、後鳥羽帝、文治五年秋、戦死、葬二于柴田郡一、其妻子落魄らくはく来二居本邑一、為二高直一建レ塔祭レ之、其妻没後、亦葬二于茲一、而建レ塔。
泉　凡　三、
古櫻泉・新櫻泉・三鈷こ泉、以上三泉、不レ詳三其所二以然一。
古塁　凡　二、
其一、東館、或號二丸森館、或澤口城一、伝云、頼義よりよし朝臣所二陣営一後光厳帝、延文中、大崎家臣、後藤美濃ごとうみの（諱不レ伝）居レ之、正親町帝、元亀以来、葛西家臣、門田淡路かどたあわじ（諱不レ伝）居レ之。
其二、西館、或號二有壁城又白岩城・新井城一、初大崎家臣、後藤美作ごとうみまさか（諱不レ伝）、後同家臣菅原帯刀すがわらたてわき（諱不レ伝）、元亀後、葛西家臣、有壁尾張ありかべおわり（諱不レ伝）、同安芸あき・同摂津せっつ（共諱不レ伝）父子三世、相継居レ之。
道　一、往二磐井郡一道。
注：（元亀中：1570年～1573年）
橋　一、土橋、長　十一間、濶　三間、（駅中）。
栗原荘小林邑、
戸口　凡　三十一、有下號二東西要害・内出川畠一地上。
神社　一、八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
寺　凡　二、
虚空山荘厳寺、真言宗、仙台府下、龍寶寺末寺、不レ詳二何時何人開山一、伝云、本尊虚空蔵、藤原正澄ふじわらまさずみ所レ造什物有二弘法大師、所レ畵えがく両界曼陀羅・嵯峨帝・宸翰しんかん阿字贊一、名跡志曰、相伝、此地古之小野小町生産之處也、門前有二若宮八幡叢祠そうし（素朴な祠）一、仍曰二若宮﨑寺前一、古昔有レ池有二巨蛇一、年年以二美婦一為レ牲いけにえ、一女子以二奇計一殺レ之、瘞うずめる二其屍于此一、建レ寺安二置虚空蔵一、（事詳二于玉造郡一抑沼條下）。
五葉山少林院、臨済宗、京都妙心寺末寺、伝云、後陽成帝、慶長中虎哉和尚開山。
川　一、玉造川、源出レ自二本郡鬼首おにこうべ邑山中一而至二玉造郡尿前しとまえ邑一、與二山川一會、至二桃生郡和淵邑一、入二北上川一。
橋　凡　二、各土橋、
其一、長　七間、濶　一間半。
其二、長　六間、濶　一間半。
道　一、往二加美・玉造・両郡一道。
同荘櫻目邑、
戸口　凡　四十一、有下號二要害八反田一地上、公族石母田典膳多頼いしもたてんぜんたより采邑。
神社　凡　五、
志波姫神社、延喜式神名帳所レ謂、栗原郡七座之其一也、名跡志曰、土人以二此社一、曰二志波姫大明神一、一説曰、高清水駅北三町餘、有二一泓おう泉一、傍有二叢祠そうし一、今曰二之清水権現祠一、是乃志和姫也、有二旱魃かんばつ一、則郷俗祈レ雨而有レ應、因又称二清水明神一、又曰、一迫八樟はちくすのき邑、伊豆野権現、是亦曰二志波姫神社一、土人伝云、往時在二築館邑一、其地為二墾田一、故移二之八樟邑一、今社是也。
鹿島神社、不レ詳二何時勧請一。
神明宮、同レ上。
愛宕神社、同レ上。
箸明神社、同レ上。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、吉祥山正林寺、真言宗、仙台府下、龍寶寺末寺、不レ詳二何時何人開山一、伝云、古昔大崎家之祈願所、而京都仁和寺末寺也。
川　一、玉造川。
同荘澤田邑、
戸口　凡　四十七、有下號二反田・川守原・沙田・中島一地上。
神社　凡　二、
鹿島神社、不レ詳二何時勧請一。
諏訪神社、同レ上。
寺　凡二、
大白山遍照院、真言宗、仙台府下、輪王寺末寺、旧在二宮城郡福岡邑一、後陽成帝、寛永中、輪王寺第十二世、州山全益和尚開山、同寺二十五世大領不白和尚、請二之邦君一許レ之、寶暦十一年七月、移二寺於本邑一、故以二大領だいりょう一為二中興開祖一。
川　一、玉造川。
橋　凡　二、各土橋、
其一、長　四十二間、濶　四間。
其二、長　五間半、濶　一間半。
道　凡　二、共往二遠田・志田両郡一道。
同荘宮澤邑、
戸口　凡　八、有二市店一而駅也、長沼五郎助致辰ながぬまごろうのすけむねとき采邑、有下號二西館・塚原・佐野・長者原一地上。
神社　凡　八、
熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
愛宕神社、同レ上。
鹿島神社、伝云、後宇多帝、弘安二年二月勧請。
八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
神明宮、同レ上。
稲荷社、同レ上。
天神宮、同レ上。
雲南権現社、同レ上。
仏宇　凡　二、
弁財天堂、不レ詳二何時創建一。
虚空蔵堂、同レ上。
寺　凡　二、
本行山長久寺、日蓮宗、越後州、本城寺末寺、伝云、光明帝、貞和中、日幡上人開山。
上高山光岳寺、曹洞宗、志田郡李埣すもぞね邑、富光寺末寺、伝云、後陽成帝、天正十九年、旦嶺和尚開山。
古塁　一、伝云、古昔大崎家臣、岩崎讃岐義久いわさきさぬきよしひさ所レ居、今長沼五郎助致辰居レ之。
川　凡　二、馬内川・皀莢さいかち川、共小川、而用水堰也。
橋　一、土橋、長　六間半、濶　一間半。
道　凡　三、
其一、往二志田・遠田両郡一道。
其二、・三、共往二玉造郡一道。
同荘川熊邑、
戸口　凡　二十一。
神社　凡　二、
神明宮、不レ詳二何時勧請一。
新山権現社、同レ上。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、稲荷山東川寺、曹洞宗、宮城郡七北田邑、洞雲寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
橋　一、土橋、長　五間、濶　一間半、（寺川）。
同荘荒谷邑、
戸口　凡　八十五、有二市店一而駅也、有下號二樋口・内野崎・中上・簔浦・竹花・藻串・杉崎一地上。
神社　一、鹿島神社、伝云、平城帝、大同中、田村麻呂たむらまろ勧請。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一、伝云、本尊慈覚大師所レ造。
寺　凡　二、
仁義山高福寺、曹洞宗、遠田郡田尻邑、東渓寺末寺、伝云、後水尾帝、寛永四年、白州長慧和尚開山。
斗瑩とけい山光明寺、曹洞宗、遠田郡田尻邑、東渓寺末寺、伝云、正親町帝、永禄五年、異庵全秀和尚開山。
倉廩　一、糴穀てきこく及儲蓄雑穀。
橋　一、在二駅北一、小板橋也、號二簀子すのこ橋一、伝云、旧跡也、不レ詳三其所二以然一。
道　凡　三、
其一、歴二澤田邑一往二志田郡一道。
其二、・三、共往二遠田郡一道。
同荘長岡邑、
戸口　凡　十六、有下號二蓑輪田・本木・白坂・岩井戸・松蔭一地上。
神社　一、鹿島神社、不レ詳二何時勧請一。
寺　一、長岡山淵龍寺、曹洞宗、遠田郡田尻邑、東渓寺末寺、伝云、後水尾帝、寛永二十年、九嵓きゅうがん和尚開山。
同荘小野邑、
戸口　凡　五十、有下號二小高・岩崎・馬﨑・馬場・馬籠・館内・須賀・大窪・蝦澤一地上。
神社　凡　三、
天神宮、不レ詳二何時勧請一。
羽黒権現社、同レ上。
白山権現社、同レ上。
仏宇　一、弁財天堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、天神山梅香院、曹洞宗、遠田郡田尻邑、東渓寺末寺、伝云、後陽成帝、天正十五年、徳應長隆和尚開山。
旧跡　凡　四、
千枝沼、名跡志曰、往時称二大崎沼一之跡也、貞享元年、為二墾田一、沼中有レ島、安二置弁財天一、郷人謂二天女島一、今水已涸。
花島山、名跡志曰、沼邊一青山也、往昔多二花木一、有二古歌一、不レ知二何人之作一、土人相伝来、陸奥乃みちのくの花島山仁はなしまやまに陰落天かげおちて、木末耳魚乃こすえにうおの升留登曾見由のぼるとそみゆ。
粧奩しょうれん泉、名跡志曰、往昔作用姫、赴二牲いけにえ于胆沢一時、設二観粧于此泉畔一、観粧了、移二容貌于此泉一、投二其具一去、土人曰二之箱清水一。
斥候櫓ものみやぐら遺址、不レ詳二何時遺址一。
古塁　凡　三、
其一、伝云、大崎義隆おおさきよしたか所レ居。
其二、伝云、大崎家臣、高清水布月齋たかしみずぬのげっさい所レ居。
其三、伝云、大崎家臣、川熊美濃かわくまみの（諱不レ伝）。
名所　一、朽木橋、名跡志曰、邑裏圮つち橋也、然在二歌林一而認二其名一。
沼　一、化女沼、産二大鮒魚一、本邑及荒谷・長岡・川熊・遠田郡沼木・諏訪峠六邑用水、名跡志曰、往時以二大崎沼鮒魚七百尾一、而放二養于此沼中一云。
堤　凡　二、 蝦澤堤、本邑及高清水・遠田郡小松三邑用水。
一坪堤、同レ上。
橋　一、土橋、長　五間餘、濶　一間半、（新郷）。
同荘雨生澤邑、
戸口　凡　三十一、有下號二皂莢さいかち澤・倉澤・大谷川・岩崎・野崎・中雨生澤・若林一地上。
神社　凡　三、
神明宮、不レ詳二何時勧請一。
三社権現社、同レ上。
館大明神社、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　一、阿彌陀堂、不レ詳二何時創建一。
同荘北宮澤邑、
戸口　凡　二十、有下號二二枚橋・前田澤・朴欠・木杭・中澤・花原一地上。
神社　凡　四、
伊豆権現社、不レ詳二何時勧請一。
天神宮、同レ上。
羽黒権現社、同レ上。
明神社、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
同荘清水澤邑、
戸口　凡　四十三、有下號二大境・前田澤・十八挽澤・深渡戸・坊田・北小澤一地上。
神社　凡　四、
海渡権現社、不レ詳二何時勧請一。
鹽竈神社、同レ上。
道祖神社、同レ上。
神明宮、同レ上。
仏宇　凡　二、
薬師堂、不レ詳二何時創建一。
観音堂、同レ上。
寺　一、主澤山泉蔵寺、曹洞宗、遠田郡田尻邑、東渓寺末寺、伝云、後西帝、承應三年、東渓寺第十世、回岩良恵和尚開山。
川　凡　二、
田中堰川・前田澤堰川、共小川也、源出レ自二北宮澤邑山中一、而至二本邑一、相會入二遠田郡蕪栗沼一。
同荘清瀧邑、
戸口　凡　二十四、有下號二桶口・内目・町田・沼田・前澤・棌くぬぎ澤一地上。
神社　一、柴明神社、不レ詳二何時勧請一。
瀑布　凡　二、共小瀑布也、邑名本レ之。
同荘荻生田邑、
戸口　凡　二十七、有下號二田中・柳澤・境日・甫内・天神澤・陽森・大門・西宮脇・宮脇・三森・川原・宿澤一地上。
神社　凡　三、
雲南権現社、不レ詳二何時勧請一。
愛宕神社、同レ上。
天神宮、同レ上。
仏宇　一、薬師堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、柳澤山大養寺、曹洞宗、本郡中邑、虎渓寺末寺、伝云、観室和尚開山、不レ詳二其年月一。
古塁　一、號二陣館一、不レ詳二何人所一レ居。
同荘西邑、
戸口　凡　六十三、有下號二内手・明宮・上澤・堰田・中里・谷壁・石澤・川崎・西河原・横手・浅野一地上、公族大立目掃部成篤おおたちめかもんしげあつ采邑。
神社　一、八幡宮、不レ詳二何時勧請一。
寺　一、天神山玖香院、曹洞宗、仙台府下、松音寺末寺、伝云、後水尾帝、元和三年、隣泰和尚開山。
堰　凡　二、
其一、號二要森堀一、本邑及萩生田両邑用水。
其二、號二西田江一、本邑及高清水両邑用水。
堤　一、號二手取澤堤一、同レ上。
川　凡　三、共小川也。
其一、自二玉造郡一流来。
其二・三、共自二本郡一ノ迫山中一流来、各入二遠田郡蕪栗沼一。
橋　一、土橋、長　六間、濶　二間、（谷壁川）。
同荘高清水邑、
戸口　凡　百十六、有二市店一而駅也、有下號二萱刈・覚満寺・外澤田一地上、公族石母田筑前興右いしもたちくぜんおきう采邑。
神社　凡　七、
紫野大明神社、伝云、所レ祭、高皇産霊たかみむすひ尊・神皇産霊かんみむすひ尊、鎮二座于京都加茂之西紫野一、称二紫野大明神一、不レ詳二何時勧請一。
神明宮、伝云、蛭児ひるこ尊、相殿祭レ之、不レ詳二何時勧請一、奥州有二神明七社一、其一宮城郡秋保、其二本邑、其三仙台、其四刈田郡白石、其五伊具郡角田、其六江刺郡岩谷堂、其七本郡川口也。
牛頭天王社、不レ詳二何時勧請一。
天神宮、同レ上。
鹿島神社、同レ上。
愛宕神社、同レ上。
清水権現社、同レ上、伝云、是乃神名帳所レ謂、志波姫神社也。
仏宇　凡　三、
如来堂、不レ詳二何時創建一。
薬師堂、同レ上。
観音堂、同レ上。
石地蔵二體、在二歩卒町東一、相去可二百間一、而各仰倒、故土人称レ之曰二仰倒のけかえり地蔵一。
寺　凡　五、
白馬山龍泉寺、曹洞宗、志田郡新沼邑、圓通院末寺、伝云、外天守芳和尚開山、不レ詳二其年月一、希文　按、寺僧云、後柏原帝、永正十六年、守芳遷化せんげ、然則後土御門帝、明應中、後柏原帝、文亀之比開山乎。
米谷山安養寺、真言宗、京都智積院末寺、不レ詳二何時何人開山一、石母田いしもた家祈願所、而旧在二伊達郡石母田邑一、従二石母田家いしもたけ一移二于本邑一、石母田家いしもたけ寄二附十六石之地一。
祥谷山福現寺、曹洞宗、南部和賀郡、正覚寺末寺、伝云、露庵和尚開山、不レ詳二其年月一、石母田家いしもたけ牌寺、而旧在二伊達郡石母田いしもた邑一、従二石母田家いしもたけ一移二于本邑一。
寶泉寺、（無二山號一）福現寺塔頭也、不レ詳二何時何人開山一。
本高山妙體寺、日蓮宗、仙台府下、仏眼寺末寺、伝云、日林上人開山、不レ詳二其年月一、石母田家いしもたけ寺也。
倉廩　一、糴穀。
旧跡　一、二本石、在下往二築館邑一路東上、伝云、古昔也、不レ詳三其所二以然一也。
古塁　凡　二、
其一、今石母田家居レ之。
其二、號二新城館一、不レ詳二何人所一レ居、観迹聞老志曰、有二古石墳一、記二元弘四年甲戌所一レ立也、不レ詳レ為二何人一、希文　按、元弘之號、後醍醐帝御宇、而四年乃重祚ちょうそ（一度位を退いた天子が再び位につくこと）建武元年也、遠国乱世改元之命未レ達、以二元弘一記之者也。
橋　凡　四、各土橋、
其一・二・三、各長　十四間、濶　二間半、（小山川・須加志川・善光寺川）。
其四、長　四間、濶　一間半、（大寺川）。
道　凡　二、共往二遠田郡一道。
同荘富邑、
戸口　凡　四十二、有下號二薬澤・御所澤・大石﨑・要害・大山・桃生田・伯耆﨑・宮小路一地上。
神社　一、熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
仏宇　凡　二、
薬師堂　二、號二上下薬師一、不レ詳二何時創建一。
寺　一、富寶山陽岩寺、曹洞宗、仙台府下、輪王寺末寺、伝云、霊元帝、延寶三年、松岩和尚開山。
同荘中邑、
戸口　凡　百四、有下號二高木・野澤・原・舟橋・四壇原・二胯また・牛淵・宮田一地上。
神社　一、熊野神社、不レ詳二何時勧請一。
寺　凡　二、水色山虎渓寺、曹洞宗、登米郡米谷邑、冷松寺末寺、伝云、正親町帝、天正八年、来庵和尚開山。
熊野山福壽院金澤寺、真言宗、仙台府下、龍寶寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
孝子　一人、邑長五郎七ごろうしち、事二父母一、奉養竭レ力、中御門帝、享保十一年十二月、蠲あきらかに二其家之公役一、賞レ之。
佐沼郷南方邑、
戸口　凡　六百四十八、有下號二本郷・西郷一地上、公族亘理要人倫篤わたりようじんともあつ采邑、以下四邑、佐沼郷也。
神社　凡　十、
八幡宮　二、共不レ詳二何時勧請一。
愛宕神社、同レ上。
稲荷社、同レ上。
赤城明神、同レ上。
新山権現社、同レ上。
天神宮、同レ上。
羽山権現社、同レ上。
石明神社、不レ詳三何時祭二何神一。
明神社、同レ上。
仏宇　凡　七、
観音堂　二、其一、称二大嶽山観音一、伝云、平城帝、大同中、坂上田村麻呂さかうえたむらまろ、造二立本尊閻浮檀金えんぶだんごん千手観音一、何時換レ之以二伝教大師所レ造十一面観音一為二本尊一、奥州七處観音之一也、名蹟志曰、此地曩昔のうせき、瘞うずめる二賊首大武丸おおたけまる頭一處也、大同中、田村麻呂たむらまろ建二悲閣一、雲慶作也、土人称二大嶽観音一、文字想夫誤二大武一者也、古昔有二両寺一、天台宗、而東號二大武山興福寺一、西號二天王寺一、今共荒廃。
其二、不レ詳二何時創建一。
薬師堂　三、共不レ詳二何時創建一。
阿弥陀堂、同レ上。
石仏、高　四尺五寸餘、不レ詳二何仏一。
寺　凡　三、
天眞山林昌寺、曹洞宗、加美郡宮崎邑、瑞光寺末寺、伝云、後光明帝、慶安二年、山南舜悦和尚開山。
東重山妙音寺、真言宗、加美郡宮崎邑、康学寺末寺、不レ詳二何時何人開山一。
日秋山宗恵寺、曹洞宗、玉造郡岩出山、實相寺末寺、伝云、後奈良帝、天文中、観室泉寮和尚開山。
古塁　凡　四、共不レ詳二何人所一レ居。
旧跡　凡　二、
玉塚、古来伝称二王塚一、不レ詳三何王之塚、而其所二以然一也。
銭神壇、有二塚大小十三一、古来称二銭神壇一、不レ詳三其所二以然一。
川　凡　五、
佐沼川、迫川之末流也、至二桃生郡神取駅後一、會二北上川一。
長沼古川、古昔佐沼川所レ流、而為二潦水一、周匝しゅうそう百四十間。
大悪戸古川、同レ上、周匝しゅうそう五百八十間。
木下浦古川、同レ上、周匝しゅうそう三百間。
地蔵古川、同レ上、周匝しゅうそう八百二十間。
沼　凡　六、
伊豆沼、周匝しゅうそう八千間餘、接二一ノ迫一、本邑曰二之伊豆沼一、一ノ迫曰二之畑岡沼一、産二鮒ふな・鰻うなぎ一。
内沼、周匝しゅうそう三千四十四間、接二一ノ迫一、本邑曰二之小淵沼一、一ノ迫曰二之内沼一。 赤淵沼、周匝しゅうそう二百四十間。
添沼、周圍しゅうい二百九十間。
赤沼、周圍しゅうい三百八十間。
金川沼、周圍しゅうい二百七十間。
橋　凡　三、各土橋、
其一・二、各長　七間、濶　二間、（築目川之口）。
其三、長　六間、濶　一間半、（馬石）。
道　一、往二登米郡一道。
藤澤邑、
戸口　凡　九十二、有下號二瀬嶺一地上、有二市店一駅也。
神社　凡　二、
藤澤権現社、不レ詳二何時勧請一。
八幡宮、同レ上。
仏宇　一、観音堂、不レ詳二何時創建一。
寺　一、鳥鵲ちょうじゃく（カササギ）山観昌寺、曹洞宗、羽州最上黒瀧、向川寺末寺、伝云、正親町帝、永禄十年、天容良贅和尚開山。
橋　凡　四、各土橋、
其一・二、各長　十二間、濶　三間、（刀石・瀬峰川尻）。
其三、長　七間、濶　一間半、（大鰐屋）。
其四、長　六間、濶　三間、（穴田）。
新田邑、
戸口　凡　二百十八。
神社　凡　六、
熊野神社　二、共不レ詳二何時勧請一。
御駒権現社、同レ上。
山神社、同レ上。
水神社、同レ上。
明神社、不レ詳三何時祭二何神一。
仏宇　凡　五、
薬師堂、不レ詳二何時創建一。
不動堂、同レ上。
観音堂　二、共同レ上。
阿彌陀堂、同レ上。
寺　凡　二、
福壽山慈眼寺、曹洞宗、本郡高清水邑、龍泉寺末寺、伝云、後醍醐帝、元徳二年、一通和尚開山。
萬壽山長照寺、曹洞宗、加美郡宮崎邑、瑞光寺末寺、伝云、後光明帝、正保元年、国律和尚開山。
沼　一、永沼、周匝しゅうそう五千九百六十七間。
橋　一、土橋、長　十三間、濶　二間半、（荒荒川）。
北方邑、
戸口　凡　三百九十二、有二市店一而駅也。
神社　凡　十三、
八幡宮　三、
其一、後陽成帝、慶長中、本邑旧主津田家つだけ所二勧請一、而佐沼郷鎮守也。
其二、不レ詳二何時勧請一。
其三、在二館中一、伝云、後鳥羽帝、建久之頃勧請。
高良神社、不レ詳二何時勧請一。
羽黒権現社、伝云、亘理家わたりけ氏神、而旧在二本郡高清水邑一、今上帝、寶暦七年、移二于本邑一、造営。
祇園社、佐沼郷鎮守也、不レ詳二何時勧請一。
稲荷社、不レ詳二何時勧請一。
紫大明神社、同レ上。
愛宕神社、同レ上。
天満宮、同レ上。
神明宮、同レ上。
諏訪神社、在二館中一、伝云、後鳥羽帝、建久之比所二勧請一。
照日権現社、在二館中一、而鎮守也、伝云、所レ祭、大日孁貴尊おおひるめのむちみこと、本地仏正観音、照井太郎高直てるいたろうたかなお護持之本尊也、不レ詳二何時勧請一、古昔有レ寺、號二日耀ひよう山昌福寺一、慈覚大師開基也。
寺　凡　五、
安楽寺、浄土宗、野州真壁郡壇林、圓通寺末寺、伝云、野州真壁郡小山、有二廃寺一、號二安楽寺一、後西帝、明暦二年、圓通寺第九世、眞蓮社良惟上人、移二其寺號於栗原郡高清水邑一開山、徒二亘理家一到二于本邑一、亘理家わたりけ寄二附十五石之地一。
高水山荘厳院松榮寺、浄土宗、岩城壇林だんりん（仏教寺院における僧侶の養成機関、仏教宗派の学問所）、専称寺末寺、伝云、後水尾帝、元和二年、良故上人開山、亘理家寄二附十五石之地一。
五聖山大智院不動寺、真言宗、京都智積院末寺、不レ詳二何時何人開山一、後陽成帝、天正十九年、成盛法印中興開山、亘理家わたりけ寄二附十三石之地一。
玉王山福生院玉泉寺、真言宗、遠田郡涌谷邑、盛寶寺末寺、伝云、旧在下遠田郡涌谷邑號二百百どど一地上、後陽成帝、慶長中、従二亘理家一、移二于本郡高清水邑一、今上帝、寶暦七年、又移二本邑一、亘理家わたりけ寄二附八石餘之地一。
月照山心往寺、日蓮宗、仙台府下、孝勝寺末寺、伝云、後水尾帝、寛永十九年、日近上人開山。
倉廩　一、租米儲蓄ちょちく雑穀。
古塁　凡　二、
其一、伝云、東照公とうしょうこう（徳川家康）改制也、往古秀衡ひでひら家臣、照井太郎高直てるいたろうたかなお所レ居也、後土御門帝、文明之比、佐沼右衛門佐平直信さぬまうえもんかみたいらのなおのぶ居レ之、後奈良帝、天文以来、大崎家臣、石川四郎右衛門直村法山いしかわしろううえもんなおむらほうさん、其子豊後義誠ぶんごよしあき、其子丹後義廣たんごよしひろ、其子彦九郎ひこくろう（諱不レ伝）四世相継居レ之、大崎家亡滅之後、太閤秀吉たいこうひでよし公、賜二大崎葛西之地十二郡於木村伊勢守吉清きむらいせのかみよしきよ一、吉清よしきよ政事不レ正、大崎、葛西之旧臣等起二一揆一、貞山ていざん君（伊達政宗）受二太閤たいこう之命一攻レ之、後陽成帝、天正十九年七月三日落城、誅二彦九郎（佐沼彦九郎）一、其後為二貞山君之封内一、賜二本邑於津田民部景康つだたみぶかげやす一而居レ之、其後孫丹波定康たんばさだやす有レ罪、没二収采邑一、今上帝、寶暦七年七月、賜二亘理要人倫篤わたりようにんみちあつ一居レ之。
其二、伝云、大崎家臣、石川讃岐いしかわさぬき（諱不レ伝）所レ居。
旧跡　凡　五、
廿木はたほこ、地名也、在二駅頭一、往古在二城邊一、伝云、古昔建二長二十尋ひろ（水の深さ、縄などの長さの単位。一尋は六尺（約一・八メートル））木一以為レ標しるし、天正以前之事也、今建二其木一為二地名一。
鹿鼻、在二本丸東山﨑一、不レ詳三其二所以然一。
佐沼御前沼、在下城北古舘下佐沼川邊、號二藤崎一地上、伝云、佐沼御前、大崎政景之女むすめ、而佐沼左衛門直信さぬまさえもんなおのぶ之妻也、有レ故投二身於此一而死。
三沼、或曰二佐沼一、在二城西山中一、所三以號レ郷名二佐沼一、此之由也、呼レ山曰二佐沼山一。
首壇、在二城西山中一、伝云、埋二一揆籠城賊徒之首一處、此邊家臣戦死之墳墓亦多。
沼　凡　三、
長沼、周匝しゅうそう五千九百六十七間、接二新田・北方二邑一。
早坂沼、周匝しゅうそう千二百二十七間。
舟越沼、周匝しゅうそう二千七十五間、接二南方邑西郷一。
橋　凡　十八、各土橋、
其一、長　四十八間、濶　三間、（駅中）。
其二・三・四・五、各長　十二間、濶　二間、(飯土井・仮屋・市島・泥内)。
其六、至二十三一、各長　六間、濶　一間半、（仮屋後・沙原・心性寺下・七日市場・姑田岸・南行・地粮じろう）。
其十四至二十八一、各長　五間、濶　一間半、（平助東・利右衛門東・甚四郎西・横前・牛旁埣ごぼうぞね）。
道　一、往二登米郡一道、希文　按、延喜式神名帳所レ謂、栗原郡神社七座之中、表刀うへと神社、遠流志別石おるしわけいし神社、今失二其處一、不レ知二何處一。




　
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